熱風団地 


 2022.10.16      多国籍の外国人たちが暮らすコミュニティ 【熱風団地】

                     
熱風団地 [ 大沢在昌 ]
評価:2.5
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■ヒトコト感想
多国籍の外国人たちが暮らす団地を舞台とした物語。架空の国ベサールの王子が日本におり、家出をした先がアジア団地だった。このアジア団地というのは主にアジアの外国人が大量に住み着きコミュニティが出来上がり、周りも外国人が住みやすいように整備された地区のことを言うらしい。

ただのツアーガイドである佐抜が、ベサール語を話せるからとベサールの王子捜索の依頼を受ける。佐抜の相棒にはベサール人だが日本で女子プロレスラーとして活躍した女だった。ハードボイルドとは違う。ミステリーとも違う奇妙な作品だ。プロレスラーの女がチンピラたちを圧倒する場面はどこかハードボイルド的ではある。アジア団地という特殊な場所での特殊なルールを元に描かれた作品だ。

■ストーリー
フリーの観光ガイド佐抜克郎は、外務省関係者から東南アジアの小国“ベサール”の王子を捜してほしいと依頼を受ける。軍事クーデターをきっかけに王族の一部が日本に逃れていたのだ。佐抜は“あがり症”だが、ベサール語という特技があった。相棒として紹介された元女子プロレスラーのヒナとともに、佐抜は王子の行方を求めて多国籍の外国人が暮らす「アジア団地」に足を踏み入れる。ベサールの民主化を警戒する外国勢力や日和見を決め込む外務省に翻弄されながらも、佐抜は大きな決断の舞台に近づいてゆく――。

■感想
熱風団地というタイトルから連想するのは、アジア地方の熱帯の雰囲気だ。アジアの外国人たちが好んで生活する地区。日本人を排除するような雰囲気なのだろうか。現実にもこれに近い団地はあるらしい。アジア人たちが協力して生活し、よそ者を嫌う風潮がある。

そんな団地であればベサール王国の王子がひっそりと隠れるのにはうってつけなのかもしれない。アジア人であれば日本人との区別が見た目ですぐできるわけではない。佐抜の相棒であるプロレスラーの女は、ベサール人と日本人のハーフというのも特殊だ。

ベサール語が特殊なため、それを話せる人は少ない。佐抜はベサール語が話せるということで、民間人でありながら外務省の外郭団体に依頼されベサールの王子を取り戻すための依頼を受ける。序盤で、ベサールの王子を隠すためにやとわれたチンピラたちとのいざこざの場面がある。

ここで、女子プロレスラーがその本領をはっきする。このあたりはハードボイルド風ではあるのだが…。ミステリーという感じでもない。ベサールは国王が政治をつかさどるのだが、未来の国王である王子の立場は難しい状態にある。

政争に巻き込まれている王子。現在の大統領であるクワンを指示する中国と民主化を後押しするアメリカと日本。この対立がそのままベサールの王子の取り合いとなる。中国側につくと、王子は国王の権利を放棄すると宣言させられる。

アメリカと日本側につくと、国王の権利は残し大統領は選挙で選ぶと宣言する。それぞれの思惑が複雑に絡み合う。王子の母親が中国側に人質にとられていることで、佐抜たちは王子に嘘の会見を開かせようとするのだが…。

政治的な要素もある作品だ。



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