なんとかしなくちゃ。 青雲編 


 2023.8.6      何かと問題解決の意識をもつ少女 【なんとかしなくちゃ。 青雲編】

                     
なんとかしなくちゃ。 青雲編 [ 恩田陸 ]
評価:3.5
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■ヒトコト感想
シリーズ化されるのだろう。梯結子が主人公なのだが、幼少期より結子は何かにつけて問題意識があり改善しようと考えている。小学生時代の誕生日会のプレゼントがどんどん高額になっていくことへの対策や、貧乏な子が参加できないことへの配慮。中学時代の生徒会長の選挙での推薦者として全校生徒へアピールするための仕掛け。多少強引な部分はあるにせよ、問題を解決しようとするそのプロセスがすばらしい。

大学に入ると城に関するサークルに入り、戦国武将の対決のIFを描く。多少小難しいのだが、シリーズの肝である商売の問題解決へとつながる流れなのだろう。恐らく結子は没落していく実家の店を手伝い、問題解決力を活かしてなんとかするのだろうが…。導入部としては申し分ない。

■ストーリー
「これは、梯結子の問題解決及びその調達人生の記録である。」大阪で代々続く海産物問屋の息子を父に、東京の老舗和菓子屋の娘を母に持つ、梯結子。幼少の頃から「おもろい子やなー。才能あるなー。なんの才能かまだよう分からんけど」と父に言われ、「商売でもいけるけど、商売にとどまらない、えらいおっきいこと、やりそうや」と祖母に期待されていた。その彼女の融通無碍な人生が、いまここに始まる――。

■感想
梯結子が大学生活を送るまでが描かれている。父親が海産物問屋の息子で母親が老舗和菓子屋の娘である結子。幼少期は姉や兄に比べて大人しい子供というレッテルが貼られていたが、実は様々なことを考えていた。小学生でここまで周りに配慮して問題解決を実行できるのはすさまじい。

友達同士の誕生日会でプレゼントの価格がエスカレートし、問題になり始める。最悪は誕生日会禁止となる恐れがあったのだが…。結子が考えだした方式はプレゼントの価格を抑え、なおかつ誰でも参加しやすいという夢のような方法だった。

結子の学生生活もまた問題解決にあふれている。運動部の運動場を巡るスペースの争い。どのようにしてどの部活も納得させるような案を出すことができるのか。日々の生活の中での考え方や誰もが納得するためのシミュレーションなど、多少やりすぎ感はあるが、読んでいて爽快感がある。

結子は普通の学生生活というよりは、将来を見越してフランス語の家庭教師をつけるなどちょっと変わったビジョンをもっている。シリーズの流れとして実家の商売を継ぐはずなのだが…。フランス語がどのように活用されるかがポイントだ。

大学時代では城を愛好するサークルに入り、そこで特殊な経験をする。歴史上での城攻めを自分たちで攻撃守備と分けて、どのように戦略を練るかをシミュレートする。まさに城オタクや歴史オタクがやりそうなシミュレーションだ。このあたりはちょっとマニアックすぎると感じたのだが、ここでも結子は独自の考えを披露する。

人とは違った視点をもち、それを整理し周りを納得させるような説明をする。現実ではありえないパターンかもしれないが、この問題解決の意識というのは参考になる。

シリーズがどう展開していくのか楽しみだ。



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