中野のお父さんの快刀乱麻 


 2023.2.22      江戸時代の小説の中の棋譜を読む 【中野のお父さんの快刀乱麻】

                     
中野のお父さんの快刀乱麻 [ 北村薫 ]
評価:2.5
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■ヒトコト感想
中野のお父さんシリーズ。古典的なネタや落語系はいつものとおり。ただ、時代を繁栄しているのか、コロナ渦で対面で話すのが難しい状況やリモートワーク全盛での問題点なども含まれている。あいかわらず古典好きにはたまらない内容となっている。今回は将棋と小説についても語られている。日常では何気なくスルーしている細かなことをお父さんが突っ込んでいる。

「武蔵野夫人」という作品のタイトルには、そもそも「夫人」がついていなかった。では、誰が「夫人」を付けたのか。そもそもが興味があったとしても、そこは気にする部分ではない。印象的なのは小説に将棋の棋譜が描かれた部分だ。その将棋の勝負は実際にはどのようなものだったのか。将棋のプロに解説を求めるのが良い。

■ストーリー
父と娘の“名探偵コンビ” 好評シリーズ最新刊!出版界で起きる「日常の謎」に挑むのは、体育会系文芸編集者の田川美希と、抜群の知的推理力を誇る高校教師の父親――。実家の掘り炬燵で繰り広げられる父娘の会話から、大岡昇平、古今亭志ん生、小津安二郎、菊池寛ら各界のレジェンドをめぐる「謎」を解き明かす……人気シリーズ第3弾。

■感想
出版社に勤務する娘の疑問を、中野に住んでいるお父さんが解く。すでに娘からの質問疑問にお父さんが答えるフォーマットが出来上がっているのですんなり楽しむことができた。本や落語好き、特に古典が好きな人にはたまらないだろう。

誰もとくに気にしないような謎を解き明かす。登場してくる小説家や落語家については、太宰治程度しか知らないので、誰かわからないが、それでもそれなりに楽しめた。作者がつけたタイトルに新たに「夫人」をつけるなんてことをしたのは誰なのか。そのおかげでヒットしたとはいえ、かなりの勇気だろう。

「菊池寛の将棋小説」は新しい。小説作品の中に将棋の棋譜が登場してくる。それも江戸時代の棋譜だ。大山九段が感動したエピソードや、小説の中での将棋の扱いなど、多数の要素が詰まっている。江戸時代の棋譜がそのまま小説の中に登場してくるのは衝撃的だろう。

となれば、その棋譜がどのような将棋だったのかをプロ棋士に聞く下りが良い。棋士のすごさが表現されている。棋譜を見てどのような将棋で、相手の腕前の具合がすぐにわかるのがすさまじい。

古典や落語を扱ってはいるが、世の中の流れも組み込まれている。コロナ渦で人と対面しにくい。まして担当作家が高齢であれば、普通よりも気を遣うことがある。リモートワークであっても、編集者の仕事的には出社した方がやりやすいなどがある。

世間の流れを受け入れながら、そこから落語の古い音源を探すことになる。驚きなのは大昔の作家や落語について、現在も調査し論文を書く人がいるということだ。それだけはネットを駆使する娘の方が情報収集に長けている。

シリーズとして世の中の動きもフォローしていくようだ。



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