ナイブズ・アウト 名探偵と刃の館の秘密


 2022.9.29     謎解きパートは切なすぎる【ナイブズ・アウト 名探偵と刃の館の秘密】

                     
ナイブズ・アウト/名探偵と刃の館の秘密/ダニエル・クレイグ,クリス・エヴァンス,アナ・デ・アルマス,ライアン・ジョンソン
評価:3

■ヒトコト感想
探偵ものには様々な有名な作品がある。「シャーロックホームズ」が有名ではあるが、本作のブランは初めて知った。原作は未読。映画としてはミステリーの基本というか、後半でのどんでん返しが良い。ただ、全体的に屋敷内での会話がメインなので、あえて映画化とする必要があったのかという疑問はある。合間に無理やりちょっとしたカーチェイスを入れ込んではいるのだが…。

映像的なトリックではないので、映画版としての衝撃は少ない。それでも脚本が優れているので、後半の怒涛の展開は観衆を引き付けるのだろう。名探偵役であるブランの個性はそれほど感じない。他の名探偵作品と比べると個性が弱い感じがする。シリーズ化には弱いが単体として十分楽しめる作品だ。

■ストーリー
NY郊外の館で、巨大な出版社の創設者ハーラン・スロンビーが85歳の誕生日パーティーの翌朝、遺体で発見される。名探偵ブノワ・ブランは、匿名の人物からこの事件の調査依頼を受けることになる。パーティーに参加していた資産家の家族や看護師、家政婦ら屋敷にいた全員が第一容疑者。調査が進むうちに名探偵が家族のもつれた謎を解き明かし、事件の真相に迫っていく―。

■感想
原作はより濃密に描かれているだろうことは想像できた。タイトルの刃の館もラストに繋がっている。巨大な出版社の長であるハーランが死んだ。家族たちは遺産を目当てにやってくるのだが…。屋敷内で家族の遺産を巡る駆け引きや、当日のそれぞれの動きなどは、まさにこの手の作品の定番的な流れだ。

最初は何も言わずにじっくりと聞き続けるブラン。序盤のブランの正体不明具合はすさまじい。会話中にピアノの一音をピンと鳴らす。何か気になる発言の際に鳴らしているような感じだ。

家政婦はハーランが死ぬまでの真実を回想する。この時点で観衆は家政婦が犯人だとわかる。それを巧みに隠す家政婦。この家政婦が嘘をつけない体質で、嘘をつくと吐いてしまうというのが巧みな制約条件だ。それによりブランは家政婦の言うことを全面的に信用することになる。

家政婦は巧みに真実のみを証言する。家族の誰かがハーランを殺害したのか、それともハーランの自殺なのか。後半になると家政婦が犯人だと知る何者かが家政婦を脅し始める。ハーランの遺言ですべての遺産は家政婦に譲ると書かれている場面が本作のメインだろう。

後半ではとってつけたようなカーチェイスがあるのが気になるのだが…。ブランが全ての真実を明らかにする。途中で違和感がある場面があるが、脚本としてはすばらしい。特に、家政婦が観念しすべての真実を家族の前で明らかにしようとした瞬間、ブランが間に入り激怒する。

ここから、謎解きのパートとなる。家政婦は自分の不手際でハーランを殺してしまったと思い込んでいたが…。実は…。非常に悲しいラストであることは間違いない。刃の屋敷というのは、象徴的にナイフや刀が放射状に並んだオブジェがあるからだろう。

探偵ものとしては優れている。



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