森鴎外 


 2023.12.19      脚気の原因を認められなかった男 【森鴎外】

                     
よみがえる天才8 森鴎外[ 海堂尊 ]
評価:2.5
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■ヒトコト感想
「奏鳴曲 北里と鴎外」で北里柴三郎と森鴎外の因縁については知っていた。本作は森鴎外単独での人生について描かれている。医者であり作家である森鴎外。同時に二足のワラジを履くタイプであり医学的にも様々な成果を出している。ただ、印象的なのは脚気の原因を最後まで伝染病としての説を変えず、軍隊に多大なる被害をこうむらせた、という部分だ。

プライドや世の中の流れがあり、自説を曲げることができなかったのだろうか。米食から麦飯に変えるだけで多くの命を救うことができたのだが…。最後まで米食にこだわった男というイメージだ。世間的には作家のイメージが強いのは、脚気の論争のせいでもあるのだろうか。自分はほとんど森鴎外のことを知らなかったので、脚気でミスしたイメージが強い。

■ストーリー
陸軍軍医、作家、啓蒙家として膨大かつ質の高い仕事をした森オウ外。留学、創作、出征、論争。豊穣でありながら複雑怪奇の天才の全体像を鷲づかみにする本格伝記。

■感想
軍医であり作家でもある森鴎外。北里柴三郎ともめたというイメージが強い。幼少期から神童といわれ、順調に出世し軍医として能力を発揮する。軍医としての業務を行いながら作家として多数の作品を世に出している。すさまじい仕事量なのだろう。

自分の中では作家としてのイメージが強い。特に森鴎外について詳しく知っているわけではない状態で本作を読んだので、驚くことが多かった。ドイツへの留学やそこでの様々な問題。ドイツでの恋人を日本に連れてきたは良いが、いいなずけがいるのでドイツへ追い返すというひどい一面もある。

多数のライバルや横暴な上司など、世の中で出世する人がぶち当たる問題にも直面している。ドイツへの留学では成績が良い者が優先される。当時、ドイツへの留学はそれなりに大変なことなのだろう。ドイツ語が流暢に話せる必要もあり、研究での専門用語も必要となる。

日本の医療を発展させようという気概がなければできないことだろう。それと共に、軍医として国に貢献しようという強い気持ちもある。軍医として軍隊の健康を保つために米食を推進したことが最後まで足かせとなるのはなんとも皮肉なことだ。

脚気で最後まで自説を曲げない姿が印象的だ。米食を貫くことで何万もの兵士が脚気で死んでいった。当時としては結核と同じように伝染病扱いされたのだろう。米食が原因であり麦飯に変えることで予防されると気づいていながら変えられなかったのだろう。

これだけ能力のある人物が気づかないはずがない。プライドなのか様々な事情があったのか。北里柴三郎が、私情を捨て、医療にまい進したのに比べると、どうしても森鴎外は周りにおもねり、ミスしたというイメージが強い。

偉大な人物であることは間違いない。



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