2023.7.10 テロの首謀者とみなされ不当に投獄された男【モーリタニアン 黒塗りの記録】
モーリタニアン 黒塗りの記録 [ ジョディ・フォスター ]
評価:3
■ヒトコト感想
実際に収容所で地獄のような投獄生活を何年も送っていたことに衝撃をうけた。911のテロ後、同じようなテロを警戒しアルカイダと思われる人物を不当に投獄する。スラヒの状況はすさまじい。いつのまにか9.11の首謀者とされ裁判がされないまま投獄され続ける。
証拠がないことからスラヒの証言頼りとなり、ついには激しい拷問によりスラヒの証言を得ようとする。このあたりは、「ザ・レポート」でCIAや政府の闇が描かれている。本作は、拷問され投獄された側が、人権弁護士のナンシーにより助け出される物語だ。強烈なのは、米軍側の関係者が、拷問による不当な証言と知り、起訴を諦めるなど、まだ救いがある部分が良い。
■ストーリー
2005年、弁護士のナンシー・ホランダー(ジョディ・フォスター)はアフリカのモーリタニア出身、モハメドゥ・スラヒ(タハール・ラヒム)の弁護を引き受ける。9.11の首謀者の1人として拘束されたが、裁判は一度も開かれていない。キューバのグアンタナモ収容所で地獄のような投獄生活を何年も送っていた。ナンシーは「不当な拘禁」だとしてアメリカ合衆国を訴える。
時を同じくして、テロへの“正義の鉄槌"を望む政府から米軍に、モハメドゥを死刑判決に処せとの命が下り、スチュアート中佐(ベネディクト・カンバーバッチ)が起訴を担当する。真相を明らかにして闘うべく、両サイドから綿密な調査が始まる。モハメドゥから届く手紙による“証言"の予測不能な展開に引き込まれていくナンシー。ところが、再三の開示請求でようやく政府から届いた機密書類には、愕然とする供述が記されていた──。
■感想
世間の流れは9.11後のテロを恐れ、テロの首謀者を逮捕しようと躍起になっていた。怪しい者はすべて投獄せよ、という世間の流れに政府やCIAは流されていたのだろう。当時の国防長官であるラムズフェルドが拷問を許可したなど、衝撃的な事実が描かれている。
不当に投獄され続けたスラヒの過酷な状況が描かれている。それと共に政府が隠しつづけた拷問の事実をどのようにして暴くかがポイントとして描かれている。その際に、米軍のスチュアート中佐が法に基づき自分の信念のもとに行動する部分が感動を引き起こす。
ナンシーはテロ犯を弁護しているということで、世間からバッシングを受ける。このあたり、一般市民からはテロ犯が有罪か無罪かは関係なく、テロ容疑がかけられた時点でアメリカの敵とみなし、それを弁護する者は非国民と考えるのだろう。
人権派弁護士として有名なナンシーの内情としては、自分の名前を売るという思惑もあるのだろうが…。なかなかできることではない。スラヒが拷問を受けたということを知るナンシーとスチュアート中佐。どちらも、その真実を重く受け止める。
衝撃的なのはすべてが実話であり、裁判でスラヒは無罪となってからも投獄生活から7年間も抜け出せなかったという部分だ。なぜかの理由は語られない。恐らくは9.11のショックが薄れた時期にしょうがなくスラヒを釈放したという感じなのだろう。
本作のようなとんでもない出来事について、誰も責任をとらないというのが信じられない。「ザ・レポート」でも語られていたが、指示した誰かは存在するが、責任はとらない。ブッシュなりオバマなりが責任をとるのがスジなのだろうが…。
すべてが真実を元にしていることに衝撃を受けた。
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