みとりねこ 


 2023.1.25      ネコ好きにはたまらない作品だ 【みとりねこ】

                     
みとりねこ [ 有川ひろ ]
評価:3
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■ヒトコト感想
ネコをテーマとした短編集。「旅猫レポート」などのキャラクターが登場したりと、作者の作品のファンであればより楽しめるだろう。読んでなくても問題はない。ネコと人間の関係というよりは、ネコから見た人間の色合いが強い。ひたすらマイペースな父親がネコにだけ好かれ、最後までネコが父親を気にする物語や、子供と猫のどちらが先に死ぬかで、せめて1日でも長く人間より長生きしたいと望むネコの話など、ネコ好きであればたまらない作品かもしれない。

尻尾が7の形をしているカギ尻尾の猫の話など、バリエーションに富んでいる。何をおいてもネコが可愛いのは変わりない。ネコから見た人間の行動の数々も面白い。ネコ好きのための作品だ。

■ストーリー
猫の浩太は、一家の長男・浩美と生まれたときからずっと一緒。もう二十歳を超えるけど、年齢を感じさせないピカピカの毛並みがご自慢。いつも醤油にひたした肉球で、テーブルクロスにハンコをペタペタ。さて、念入りな肉球ハンコのわけは――?きっとあなたの宝物になる。猫とあなたの7つの物語。

■感想
「ハチジカン」はハチと名付けられたネコが拾われたサトルと別れる物語だ。絵に書いたように幸せな生活を続けるサトル。そんな家に拾われてやってきたハチ。ただ、幸せは長くは続かない。何かあると思わせながら、ネコではなくサトルの家族に事件が起こる。

サトルの両親が事故で死亡し、おばさんの家に行くことになるサトル。ハチは事態の深刻さを感じ取り、もうサトルといられないことに気づく。これが、別の短編である「こぼれたび」と繋がることになる。

印象的なのは「粉飾決算」だ。自由気ままでマイペースな父親の好きな動物はハイエナ。貰われたネコが死んでも「そうか」で済ましてしまう。そんな父親ががネコを拾ってくる。人になつかないネコが父親にだけはなつく。

無反応の父親が良い。ネコが足元にすり寄ってきたとしても、軽く足蹴にしたりもする。そんな父親が寝たきりとなり死んだとしても、ネコはなぜか父親が寝ていた部屋でたたずんでいたりもする。マイペースな父親のキャラクターが良い。

表題作でもある「みとりねこ」は、ウサギの死から死を身近に感じ始めた小学生の浩美が、ネコの浩太の死を思い悲しむ物語だ。子供が死を理解し、自分の親がいずれ死ぬということを考え始めるのはよくあることだ。

身近なペットであるネコの浩太が自分よりも早く死ぬ。それを悲しむ浩美。ネコの浩太が、浩美よりも1日でも長く生きようとするのがなんだかいじらしい。浩美を看取るというのはありえないことかもしれないが、強烈なインパクトがある。

ネコ好きにはたまらない作品だ。



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