2013.10.30 悟とナナが旅にでた理由 【旅猫リポート】
評価:3
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■ヒトコト感想
ナナという猫をひろった悟。ある理由からナナを飼えなくなり、新しい飼い主を探す旅にでるナナと悟。旅先で出会うのは、悟の古い知り合いばかり。ナナの飼い主を探す旅はオマケのひとつとして、本来の目的は旧友たちとの再会にあるのだろう。それに気づくのは物語の終盤だが、そこに至るまでは、なんてことない旅と出会いの物語となっている。
複雑な家庭で育ったぶっきらぼうな転校生。ひそかな三角関係になりそうな同級生たち。必ずしも家族に恵まれているとは言えない旧友たちばかりだが、幸せに暮らす現在が癒される。ナナが必ず、そこで飼われている動物たちと仲たがいし、結局ナナを置いていくわけにはいなかいという定番の流れがまたうれしくなる。
■ストーリー
秘密を抱いた青年と一匹の相棒は“最後の旅”にでたさあ、行こう。これは僕らの最後の旅だ。一人と一匹が見る美しい景色、出会う懐かしい人々。心にしみるロードノベル。
■感想
ナナと悟の旅。単純にナナの新しい飼い主を探す旅かと思いきや、実はそうではない。旧友と再会し、過去の状況から現在に至るまでを描き、懐かしさとなんだかんだありながら、今は幸せです。といった感じで締めくくられている。登場人物たちが皆それなりの人生を送っているのが良い。
昔はいろいろと問題があったけど、今は…。過去の出来事を、幸せな現在に思い出話として語るのは楽しくなる。中には、今でも何かしら心にひっかかるものがある人もいる。ナナの飼い主探しという名目で、旧友を尋ねる物語かと中盤までは思っていた。
物語は終盤で一気に変化する。もともと複雑な家庭に育った悟だが、想像以上に複雑な要因がまだ隠されていた。悟が昔飼っていたナナにそっくりな猫のハチ。ハチと離れ離れになったことが一番の心残りである悟はナナに対して、強烈なまでのこだわりをもつ。
ナナが少しでも気に入らないペットがいたら、そこはナナの新しい住処にはならない。穏やかな悟の口調にも、ナナに関することには妥協しないという強い意志を感じずにはいられない。それは、悟の状況がよりそうさせるのだろう。
本作が単純なナナと悟の旅物語で終わっていれば、あまり印象に残らないだろう。ラストの展開は思わず涙がこぼれそうになる。猫は犬ほど飼い主に心酔することはない。ナナのぶっきらぼうな言葉の端々に見えてくる悟への愛が、強烈なインパクトとして心に残る。
悟が旅にでた理由。そして、旧友に真実を語らない理由。ナナと別れなければならない理由。すべてが判明したとき、あまりの衝撃に驚かずにはいられない。ナナの淡々とした言葉の中に、実はかなり悟を強く思う気持ちが隠れていた。それを読み解いたとき、涙が止まらなくなる。
まったく予想外の展開に、不意を打たれた感じだ。
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