メットガラ ドレスをまとった美術館 [ アナ・ウィンター ]
評価:3
■ヒトコト感想
メトロポリタン美術館で世界最大のファッションイベントが開催された。その主催者は「プラダを着た悪魔」のモデルとなったVOGUE編集長のアナだ。ファッションイベントが開催されるまで、様々な紆余曲折がある。特に印象的なのは、招待客を誰にするのかということと、席の配置をどうするかという部分だ。限られたセレブだけを招待する。ニュースでよく見るレッドカーペットを歩く映像は、招待客だけの特権だ。
演出の映画監督やメットのキュレーターやアジア美術部門の責任者など、様々な利害関係者たちの思いが錯綜する。開催日までギリギリとなり、あれがないこれがない。間に合わないだとか、徹夜だとか、この手の流れは定番なのかもしれない。
■ストーリー
メトロポリタン美術館(通称:メット)にて、年に一度開催される世界最大のファッションイベント《メットガラ》。その主催者は、ファッション誌US版「VOGUE」編集長で、メット理事でもあるアナ・ウィンター。彼女が主催するこのイベントの目的は、服飾部門の活動資金調達(アナが理事就任してからの活動資金総額は1億2千万ドル超)。そんなイベント開催に向け、アナとコンビを組むのはメットのキュレーター、アンドリュー・ボルトン。
彼は従来の服飾展示を脱却した挑発的な展示で人々から絶賛を浴び、アナからも一目を置かれていた。そして二人は、15年の企画展「鏡の中の中国」に向け、アジア美術部門に企画を持ち込むが、様々な問題が発生し…。本作は史上最多の入場者数を記録した展示会の制作過程やスタッフ、豪華セレブ陣に密着した、至福ドキュメンタリーである。
■感想
本作の主役はアナとキュレーターであるアンドリューなのだろう。アナはどちらかというと、決断を優先しテキパキと指示するタイプだ。対してアンドリューはすべての責任者という立場なのだろう。搬入の遅れや準備の遅れ、日程調整に四苦八苦しているのが伝わってきた。
有名映画監督が演出を手掛け、中国がテーマということもあり、政治的な問題を引き起こす可能性すらある。中国のメディアからインタビューを受ける場面では、過去の中国ばかりを取り上げていると、クレームのようなものを言われている。アンドリューは辛い立場だ。
アナの独裁具合がすさまじい。これまでに結果を出しているからなのかもしれないが、アナのいうことはすべて正しい、という流れになっている。展示品の見せ方ひとつにしても、アナが却下したらすべては無しとなる。アナの感性や好みが優先される。
担当者が苦心し考えた案をあっさりと否定し、アナの思うとおりにする。その決断ができることと、それを受け入れる周りがすごいと思った。VOGUEの編集部が移動する際には巨大なデジタルサイネージを、いらないの一言で外してしまうのは強烈だ。
セレブたちは趣向を凝らしてドレスでレッドカーペットを歩く。これこそがファッションイベントのメインなのだろう。ここでも、セレブの立場の違いやVOGUEの編集が待つインタビューエリアを素通りしたからと文句を言ったりもする。おそらくは、表に出てこないが相当なごたごたがあるのだろう。
セレブたちを一堂に集めて、席順を勝手に決める。主に有名なハリウッド俳優たちが、きらびやかな姿で登場してくる。VOGUE編集部のアナ以外の編集者たちも、なんだか映画の世界から出てきたように輝いている。
巨大なイベントを開催する苦悩の最高レベルだ。