プラダを着た悪魔


 2021.1.2      今見ると、強烈なブラック企業だ【プラダを着た悪魔】

                     
プラダを着た悪魔<特別編> [ メリル・ストリープ ]
評価:3

■ヒトコト感想
ひさしぶりに見た。前回見たときにはシンデレラストーリーの典型的な面白さに満ちており、アンディが成長していく姿と、ミランダの無理難題を乗り越えていく姿勢に好感がもてた。久しぶりに見ると、昔とだいぶ印象は変わってくる。まず、ファッション誌のカリスマ編集長がどれだけ偉いのか?という思いと、ファッションがすべてという雰囲気に違和感しか覚えなかった。

今現在であればこんな状態はありえないだろう。カリスマ編集長の秘書としてプライベートな依頼もふくめてすべてをこなさなければならない。とんでもなくブラックな企業だ。ただ、アンディは夢のために頑張れるのだろうが…。中盤ではその代償として恋人との別れが描かれている。今見ても楽しめるのだが、シチュエーションに違和感がある。

■ストーリー
大学を卒業し、ジャーナリストをめざしてNYにやってきたアンディ。オシャレに興味のない彼女が、世界中の女性たちが死ぬほど憧れる仕事を手にしてしまった! それは一流ファッション誌“RUNWAY"のカリスマ編集長ミランダ・プリーストリーのアシスタント。しかし、それは今まで何人もの犠牲者を出してきた恐怖のポストだった! ミランダの要求は、悪魔的にハイレベル。

朝から晩まで鳴り続けるケイタイと横暴な命令の数々、その上「センス、ゼロ!!」と酷評され、アンディはこの業界が努力とやる気だけでは闘えないことを思い知らされる。キャリアのためとはいえ、私生活はめちゃめちゃ。カレの誕生日は祝えないし、友達にも愛想をつかされる。この会社で、このままでいいの? 私って、本当は何をしたいんだっけ?

■感想
ジャーナリストになる夢をつかむためにオシャレ業界に飛び込んだアンディ。序盤のアンディはダサい扱いを受けているのだが…。客観的にみるとアンディはそこまでダサくない。おしゃれファッション誌に関わる者は、すべて皆おしゃれでなければならないのだろう。

秘書たちは目の周りに青いアイシャドーを塗りたくり、細いオシャレな服を着て闊歩する。ミランダの依頼はどんなことでも文句を言わずにこなさなければならない。今見ると、とんでもなくブラックな仕事に思えて仕方がない。

生き残るためにはオシャレでいるしかない。みな、やせることに必死で炭水化物を極力避けようとする。どんな苦しい仕事や要求にも耐えられるのは夢があるからだろう。アンディの先輩であるエミリーは秘書としてミランダと共にパリに行くことだけを目指している。

エミリーの夢が破れたとわかった瞬間に、エミリーが病院のベッドでチョコを食べパンをむさぼり食うシーンは、本来の欲望が存分に表現されていた。アンディはあくまで自然体で夢をかなえようとする。無理をしてまで自分を追い込むことが正義だとは本作は言っていない。

ラストではアンディの無理難題にすべて答えてきたアンディだが、ふと立ち止まり、自分の真の夢に気づいた時に、秘書をやめることになる。怒りや苦しみからの脱出ではない。ラストでアンディはミランダと偶然再会するのだが、そこで見せた笑みがすべてを物語っているのだろう。

オシャレでかわいい女子だけが正義ではない。ダサいと言われたアンディが変わっていく要素もよいのだが、今と比べると、明らかにいきすぎたミランダの権力というのが印象深い。

かなり強烈な物語だ。



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