街とその不確かな壁 [ 村上春樹 ]
評価:3
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■ヒトコト感想
村上春樹の長編小説。どうも過去に描いた作品を見直した作品らしい。初期の村上春樹の雰囲気がでている。何かよくわからない世界の物語。影と実体があり、人間の体から影を分離できる世界。影自身にも人格があり会話ができる。不思議な世界は壁に囲まれた街となっている。何かを暗喩しているのかと思えたのだが、よくわからなかった。
夢読みという職業があり、古い夢を読む。そこから現実の世界になり、影を取り戻した男は普通の生活をする。図書館の館長として生活し、カフェの店長と付き合う。このあたりは村上春樹が良く描く、規則正しく生活する独身の男のパターンだ。結局、何もオチがなく終わってしまうのはいつもの通りだ。
■ストーリー
その街に行かなくてはならない。なにがあろうと――〈古い夢〉が奥まった書庫でひもとかれ、呼び覚まされるように、封印された“物語”が深く静かに動きだす。魂を揺さぶる純度100パーセントの村上ワールド。
■感想
実体と影が分かれる世界。影を奪われた人は、影のない生活をする。影は本体と離れたことで衰弱し、いずれ消えてしまう。不思議な世界での物語がスタートする。夢読みという職業や影と本体が分かれる世界は独特なものがある。
タイトルにある壁というのは、影が隔離されている壁に囲まれた街のことだ。影と実体を分けられた者は、夢読みとしての職業につくことができる。衰弱した影と一体化すると、現実世界に戻る。よくわからない世界観ではあるが、次のパートでは現実世界に戻ることになる。
現実世界では影と一体化したことで夢読みの仕事を辞めて図書館の館長となる。ここでも、元図書館の館長が登場しており、そこでも不思議な流れとなる。実は元館長は死んでいたが、男とひとりの女性だけに姿を見せる。それらが夢読みだとかそのあたりに関係があるのかは不明だ。
現実世界での落ち着いて平凡な日常は、いつもの村上春樹の独身男性の生活風景だ。規則正しく生活し、たまにカフェにいく。カフェの女店主と仲良くなり、一緒に食事をしたりもする。このあたりはいつもの雰囲気だ。
そこから謎の少年が登場し、男が知る壁に囲まれて街へと行こうとする。ある意味死の世界のような感じなのかもしれない。影を奪われると夢読みの仕事をしながら、その街で生活することになる。現実世界で突然姿を消した少年について大騒ぎとなる。
手がかりを知ると思われる男に、少年の家族が話を聞きにくるのだが…。ミステリアスな雰囲気のまま物語が終わるのはいつものとおりだ。何か正体が明かされるわけでもなく、謎は謎のまま放置されている。
村上春樹作品のいつもの雰囲気だ。