2022.11.19 宗教だけではない、スーパーマン的存在 【空海】
空海/高村薫
評価:2
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■ヒトコト感想
空海は最澄と同様に歴史の授業で知っているくらいだ。現在の宗教にどれだけ影響をおよぼしたのか。歴史上の人物を作者が細かく紐解いているのだが…。とにかく前半部分は自分にとってかなり難易度が高かった。そそもそが宗教の成り立ちに興味があるわけではないので、登場してくる歴史的な流れや意味がほとんど理解できなかった。
空海と最澄がおり、それぞれが独自の宗教としての礎を作ったというのはわかる。その後、世間にどのようにして伝わってきたのか。現代の宗教にどれだけ影響を与えたのか。今、多数の宗教があるにせよ、一般の信者が空海を意識しているかというとそうではない。ただ、実はほとんどの宗教は空海の影響の元で実施されていることには驚いた。
■ストーリー
空海は二人いた。民間信仰に息づく弘法大師を含めると、つまりは三人か。劇場型宗教リーダーとして、国土経営のブルドーザーとして生き、死しては民間信仰の柱として日本人の心を捉えてやまぬ男。わが国の形而上学の基礎を築いたのみか、治水事業の指揮まで執った千二百年前のカリスマ。一人の人間にそれを可能にしたのは一体何だったのか――。空海の足跡を髙村薫がカメラ片手に辿る思索ドキュメント。
■感想
空海は歴史上の人物でしかない。何かしら物語形式になっていれば、すんなり入り込めたかもしれないが、作者が調べ経験し会話をして情報を得たことをまとめているので、それなりに宗教的な知識がないと辛い作品であることは間違いない。
遣唐使として中国へ渡り、中国から宗教を日本へ持ち帰った空海。作者的には宗教の人というよりは様々なことを一人でやりきったスーパーマンというイメージらしい。日本という国を発展させるために並々ならぬ貢献をした人物。そう描かれていることが意外でしかなかった。
間違いなく今の宗教があるのは空海のおかげなのだろう。かといって、今のお坊さんたちすべてが空海に心酔しているかというとそうではない。すでに歴史上のいち人物としてしかないので、今更というのはある。自分がそこまで宗教に詳しくないので、世間一般の空海のイメージしかない。
つまりは、歴史の教科書に載っている程度の知識しかない。下手すると鑑真などと同じレベルかもしれない。本作では空海の足跡とは別に四国のお遍路さんについても語られている。どちらかというと、そちらの方が興味深く読むことができた。
四国にはハンセン病の患者が隔離された病棟があったらしい。今現在も存在していることに驚かずにはいられない。家族からも引き離され、そこで死ぬのを待つだけ。ハンセン病患者として周りから差別され続けた人々が拠り所にするのは宗教しかない。
お遍路さんで観光とは別に徒歩で全てを周ろうとする人は、何日間も野宿をする必要があるらしい。このことについても自分が知らなかっただけなのだが、いわゆる観光地としてのイメージしかなかった。本気の人の存在をどこか見ないようにしていたのかもしれない。
宗教の知識がある程度ないと辛いだろう。
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