2022.10.24 「いいヤツ」でなんでも押し付けられる 【答えは風のなか】
答えは風のなか [ 重松清 ]
評価:3
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■ヒトコト感想
重松清の短編集。なんとも微妙な気持ちになれる小学生に関わる短編集。コロナ渦のなかでの物語なので、マスクをテーマとした作品や、原発を誘致する際の街の問題など、今だからこそ存在する物語となっている。「いいヤツ」なんてのは、まさに大人しい小学生がいいヤツという言葉でなんでもかんでも押し付けられるという流れとなっている。
小学生だけでなく、大人でもありえる流れかもしれない。いいヤツという言葉を免罪符としてなんでも押し付ける。そこに反発する瞬間的な勇気の物語となっている。「ぼくらのマスクの夏」は数年後に読むと、なんともいびつな作品と思えてくるのだろう。なんでもかんでも批判されたくないために自粛の嵐であった奇妙な時期だ。
■ストーリー
はじめて感じる胸のモヤモヤ。過ぎ去ってしまったあの頃のこと。いま、心のなかにある感情はこれからどこに行くのだろう。家族、友だち、社会。胸がぎゅっと苦しくなったとき。頭でも、心でも、わからなくても、きみといっしょに考える。この世界を、ずんずん歩いていくために。『きみの町で』に続く10の物語。
■感想
強烈なインパクトがあるのは間違いない。「いいヤツ」は大人しい小学生がクラスのリーダー的存在に頼まれたことをやったことで、いいヤツと言われる。それにより、いいヤツとしてまわりに知られ、なんでもかんでも押し付けられることになる。
そのことを理解していながら、言いだせない小学生。父親も人から仕事をどんどん押し付けられ、毎日遅くまで残業するタイプだ。悪意ある「いいヤツ」に対してどのように反発するのか。小学生同士ではありがちな展開なのかもしれない。
小学生から見た親の特殊な環境もある。親が末っ子で、田舎に帰るたびに周りからバカにされたりする。田舎であればあり得ることなのだろう。自分の父親が他の大人からイジられるのを子供はどのような思いで見るのか。イジりはある意味、一歩間違えればイジメとなる。
田舎ならではの風習だからと、何もできない状態というのは強烈なインパクトがある。男尊女卑が根強く残っている状況のため、そこから抜け出すことはできない。田舎へ帰るのが憂鬱になる一番の要因なのかもしれない。
「ぼくらのマスクの夏」は、まさにコロナ渦をテーマとした作品だ。コロナでの自粛の嵐。楽しみにしていた野球の大会が中止となる。そればかりか、少人数で集まって練習していたところを近所の人に見られ、そのことが問題視され野球のコーチが解任されたりもする。
世間のコロナ騒動での過剰な自粛っぷりと、マスク警察などの余計なお世話的な活動が描かれている。本作を数年後読むと、違和感があふれた状態となるのだろう。時代を感じさせる小説としては貴重だ。
当時の自粛の嵐は、今思い出しても違和感ばかりだ。
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