この世で俺/僕だけ


 2022.8.20     朝のテレビ番組のラッキーアイテムで変わる男【この世で俺/僕だけ】

                     
この世で俺/僕だけ [ マキタスポーツ ]
評価:3

■ヒトコト感想
平凡なサラリーマンと不良高校生の物語。全体的にぶっ飛んでいる。物静かで仕事を押し付けられるタイプの中年サラリーマンの伊藤。カツアゲが当たり前のどうしようもない不良の黒田。朝の占いを気にして、順位が良かったからと気分が良くなったりもする。伊藤がコンビニに止められたヤクザの車を盗み出すことが事の発端だ。伊藤を捕まえるために黒田が原チャリで追いかける。

なぜかその車の中には赤ちゃんがいた。おじさんと高校生がヤクザや警察、そして市長選挙の陰謀に巻き込まれていく。ありえないようなゴタゴタが良い。盗んだ車を走らせていると、後ろから市長候補の男が血まみれ状態で必死の形相で追いかけてくる。先がどうなるのかわからないが、人生に鬱屈を感じている者たちが何かを変えようとしているのは感じることができた。

■ストーリー
かつてバンドを組み、パンクな魂と共に生きていた伊藤博(マキタスポーツ)。彼のこころにはいまも「弾丸アームストロング」という曲が鳴り響いているが、現実は、上から押しつけられる仕事を淡々とこなす、中年サラリーマンのしがない日常が転がっているだけだった。仲間と一緒に、カツアゲをつづけている不良高校生、黒田甲賀(池松壮亮)。彼の根底にあるのは、警察官の父親、晃司(羽場裕一)への屈折した想いだったが、それを吐き出す機会はなかなか訪れなかった。

縁もゆかりもないふたりは、けれども、ある朝、同じテレビ番組で、ある「ラッキーアイテム」に出逢う。伊藤は、その「ラッキーアイテム」に従って、コンビニの前に停めてあった車を強奪。それを「感じた」甲賀も、突き動かされるように、バイクで車を追った。黒田は伊藤を捕まえ、車の主に、車を返そうとするが、車の後部座席に置かれた段ボール箱に赤ん坊がいたことから、異変を感じる。

車の主である、怪しげな男は、ほんとうにこの子の父親なのか?取り引き現場に現れた、強面の男たちから、直感で逃げ出す伊藤と甲賀。ふたりは、やがて、赤ん坊が、この街の再開発に反対する政治家、大隈泰三(野間口徹)の子供であり、彼の立候補を阻もうとする市長、犬養亨(佐野史郎)の指示で、ヤクザ、浜口英雄(デビッド伊東)が行なった偽装誘拐であることを知る。このままでは、自分たちが誘拐犯に仕立て上げられてしまう!

思い切って晃司に連絡したものの、警察さえも味方にはなってくれないことを直感した甲賀は、伊藤と共に、自力で大隈の許に、赤ん坊を届けることを決意。こうして、伊藤と甲賀の、果てしない逃避行がはじまった。

■感想
伊藤のサラリーマン生活は同情できるが、よくあるタイプだ。人が良すぎるため仕事を押し付けられる。他人のミスもいつの間にか責任を押し付けられる。大人しいので反論することもない。そんな伊藤が朝のテレビの星座占いで自分の星座が1位になったからと思い切った行動にでる。

それがコンビニにエンジンをかけて止められていた車を盗むという行動に変化していく。やることがぶっ飛んでいる。その車の中に赤ちゃんがいたことで事態は混沌としてくる。赤ちゃんを中心に右往左往するのは、どこか「東京ゴッドファーザー」を思い出してしまった。

黒田はどうしようもない不良高校生だ。カツアゲし教師からにらまれ、親からは見捨てられている。黒田は伊藤が車を盗む場面に遭遇したため、伊藤を追いかけいつの間にか赤ちゃんを伊藤と共に守ることになってしまう。

最初は持ち主に車と赤ちゃんを返そうと思っていたのだが…。赤ちゃんが誘拐されたと知ると、伊藤と共にヤクザから奪い返すことを考える。ありえない展開が良い。市長選の陰謀に巻き込まれ、そこからいつの間にか、伊藤たちが誘拐犯とされてしまう。

物語の結末は描かれていない。ただ、自分の思う正義のために伊藤と黒田はヤクザと市長側に突っ込んでいく。警察との市長側の癒着やヤクザとずぶずぶの関係など、強烈なインパクトがあるのは間違いない。伊藤や黒田がただでは済まないのは間違いない。

そもそも伊藤がヤクザの車を盗んだことが発端なのだが…。むちゃなことをするのは、見ていて気分が良い。先のことを考えず、自分の思うがままに勢いで動き出す。先を考え世間体を考えるとできる行動ではない。

とんでもない流れの作品だ。



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