こんな夜は (幻冬舎文庫) [ 小川糸 ]
評価:2.5
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■ヒトコト感想
小川糸のエッセイ集。日常の何気ない出来事をエッセイとするのは毎回のことだが、住んでいる場所がドイツだったりモンゴルだったりするので変化がある。さらには時期的に東日本大震災が起きたころのため、震災での出来事やそれに付随する日々の出来事をエッセイとしている。
売れっ子作家として「食堂かたつむり」が大ヒットしたが、そこまで派手な生活をするのでもなく、手料理が一番という感じで日々を過ごしている。どこか昔読んだ「銀色夏生」のような印象を受けた。ベルリンでの暮らしについては日本との違いが明確にあるので、そのあたりの驚きや新鮮さを描いている。のんびりとした日常や日々のわずらわしさを忘れさせてくれるエッセイだ。
■ストーリー
古いアパートを借りて、ベルリンに2カ月暮らしてみました。土曜日は青空マーケットで野菜を調達し、日曜日には蚤の市におでかけ。窓の外から聞こえるストリートの演奏をBGMに、読書をしながらお茶を飲んだり、さくらんぼのジャムをことこと煮たり。ベルリンの街と人々が教えてくれた、お金をかけず楽しく暮らす日々を綴った大人気日記エッセイ。
■感想
相変わらずのエッセイ集。小川糸が日々の出来事をエッセイとする。今回はベルリンでの2か月間の暮らしがメインとして描かれている。作者のエッセイを通してドイツでの生活での日本との違いがよくわかる。特に驚いたのは電車での切符の件だ。
ドイツでは電車の改札がないらしい。切符は存在しておりランダムでチェックされるのだろうが、改札がない。つまり、誰もが改札がなくても切符を持ち、チェックされて罰金を払うよりもちゃんと切符を買う方を選んでいるということだ。性善説的な感じだが、日本でもできそうな気がした。
食事の量が多いのは想像できた。ドイツ人の体のでかさからすると、日本人の1.5倍は食べたり飲んだりしているのだろう。ドイツといえばビールとソーセージだが、当然それらも楽しんでいる。気質的には日本人に近いのかもしれない。
几帳面できれい好き。日本の鉄道がドイツからの指導の下に作られたというのが良くわかるというのは面白い。日本の山手線や地下鉄などはドイツを手本に作られているとのこと。ドイツに日本と同じような細かな路線図があることには驚かされる。
日本に帰ってきてからの日々は安定しているが、タイミング悪く東日本大震災が発生した時期のようだ。当時の混乱や津波の激しさ、そして驚き。震災から一週間で普通の日常に戻っていることの驚き。特に原発だとか日本政府の対応だとか社会的な何かに言及することはない。
あくまでも日常の目線でエッセイは語られている。サラリと読めて印象的な出来事があればエッセイとしてメリハリがつく。ただ、作者のエッセイ集をいくつか読んでいると、全部がほぼ同じように感じてしまう。
変わらない日常なのかもしれないが…。