君が見たのは誰の夢? 


 2024.2.6      新種のウィルスが人の細胞を老化させる 【君が見たのは誰の夢?】


                     
君が見たのは誰の夢? Whose Dream Did You See? (講談社タイガ) [ 森博嗣 ]
評価:3
森博嗣おすすめランキング
■ヒトコト感想
ウォーカロンシリーズ。グアトとロジの物語だ。ウォーカロンであるロジの体に異変が起こる。新種のウィルスに感染している可能性があり、そのウィルスに感染した者たちが何者かに拉致される。人が死ななくなり、子供が生まれなくなった未来の世界で、新種のウイルスはどのような害を与えるのか。人工知能やマガタシキなど、いつものキーワードはそのままに新たな展開を描いている。

面白いのは、バーチャルの世界が全盛となり、人は物理的な争いをなくし、肉体を捨ててバーチャルの世界で生きることを選択する部分だ。AIや技術の進化、そしてバーチャルの世界の発展は、もしかしたら地球規模の環境破壊を食い止める技術なのかもしれない。新種のウィルスの役目は秀逸だ。

■ストーリー
ドイツで受けた精密検査でロジに不具合が見つかった。詳しく調べるため、グアトと共に日本へ帰国。情報局本部に近い病院へ入院した。そのロジの診断データが、外部に漏洩しているという。ロジは、まったく未知の新種ウィルスに感染している可能性があり、何者かがその情報を探っていると思われた。ロジを心配して病院へ向かうグアトは、そこでロジの姉と称する女性と出会うが。

■感想
人工知能と会話をし、人間は死ななくなり、人間そっくりの人造人間であるウィーカロンが普通に存在する未来。人は物理的な体を捨ててバーチャルの世界で生きることを選択する一定層が存在する。グアトの妻であるロジの体に異変が起きる。

新種のウィルスに感染しており、それはグアトにも感染していた。すぐに大きな影響があるわけではないのだが、長期的に細胞に影響があると調べはついている。技術の進歩で人は死ななくなる。新種のウィルスは細胞を老化させるという衝撃的な真実が明らかとなる。

新種のウィルスに感染した者たちが、次々と拉致されていた。世界的なウォーカロンメーカーであるフスが関連していると思われていたのだが…。フスが新規に開発した新臓器はそれを使うことで、子供を産むことができるという画期的なものであった。

これがどのように影響するのか…。ロジが新種のウィルスに感染し、細胞が老化していくと告げられる。そのことは未来では衝撃的な出来事としてとらえられているのだが…。ウィルスは、ウィルスという名前がついているが、人間にとって必要なウィルスであったと判明する。

人は細胞の老化により新陳代謝を行うのが正常だ。未来の世界では細胞は老化せず人は生き続ける。となると、妊娠もできない。フスが拉致の黒幕であり、新種のウィルスに感染することで人は子供を産むことができるとわかる。バーチャルの世界にシフトしたことで物理的な戦争はなくなりつつある。

これで子供を産むことができるようになれば、未来の世界としてはなんの悩みもないことになる。唯一の懸念事項としてはバーチャルの世界を維持するための電力の奪い合いが発生しないかということだけだ。

強烈な未来像が描かれている。



おしらせ

感想は下記メールアドレスへ
(*を@に変換)
*yahoo.co.jp