かぞえきれない星の、その次の星 


 2023.1.30      コロナ渦の小学生の苦悩を描く 【かぞえきれない星の、その次の星】

                     
かぞえきれない星の、その次の星[ 重松清 ]
評価:3
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■ヒトコト感想
重松清の短編集。こいのぼり視点での物語や、コロナ渦での子供たちの生活の物語など、今の時代だからこそ成立する物語だ。かなり重い話もある。「ウメさんの初恋」ではお雛様のお内裏様が初恋の人と語る。戦争での経験と家族や兄弟がどうなったのかが語られている。小学生でもわかるような言葉で戦争を語る。

人によってはかなり心に響く作品だろう。こいのぼり視点など、どこかおとぎ話的な雰囲気がある。何か教訓めいた言葉があるわけではない。あとから、少し思い出すような感じかもしれない。ブラジル人の年ごろの娘をもつ父親と娘の関係というのは、かなり強烈なものがある。父親の気持ちがわかりすぎて仕方がない。

■ストーリー
感染症がひろがり休校になってしまった春、子どもたちのためにこいのぼりが企んだのは……。 「こいのぼりのナイショの仕事」「こいのぼりのサイショの仕事」大切で大好きな相手であればあるほどいまは会えない。父と娘は、画面越しで会話する。 「天の川の両岸」ミックスルーツのリナはお母さんと二人暮らし。「日本人らしい」っていったい何だろう――。 「コスモス」「星のかけらには、さみしさが埋まってる」夜空にちりばめた、11の小さな星たちの物語。

■感想
「コスモス」は印象的だ。リナは外国の血が入っている。あえて言わなければわからない容姿をしているのだが…。友達が良かれと思ってかける声が、実はリナには負担になっていた。その日のモヤモヤを川に石を投げることで解消する。

客観的に読んでも、別にリナがモヤモヤするような言葉ではないと思えたのだが…。「カミングアウトしなければ見た目まったく日本人と同じだよ」というような言葉がリナには特大の石を川に投げ入れる程モヤモヤしたようだ。

人間ではないモノの視点の物語がある。こいのぼりやカエルの置物だ。コロナが広がり学校は休校となり子どもたちには見えないストレスがたまる。過去を見返しても、コロナ渦のような時代はない。マスクをして生活し、学校が休校となる。

ソーシャルディスタンスをとり生活する。今の時代の小学生はもしかしたら友達の素顔をほとんど知らない状態なのかもしれない。このコロナ渦を経て、マスクを常にする人はコロナが収束しても続くのだろう。時代の転換期だ。

短編なのでサラリと読むことができる。重い話もあるので、精神状態によっては辛くなるかもしれない。ファンタジーあふれる作品や、おばあちゃんが子どもに戦争のことを伝えるための話もある。日本人らしいというのは、ハーフの人にとっては決して誉め言葉ではないと初めてわかった。

人種ではなくその人本人を見てもらいたいということなのだろうか。ついつい、表面的な会話の中では、日本人っぽく見えますね、なんて言葉を言ってしまうのかもしれない。

心に響く短編集だ。



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