カモナマイハウス 


 2024.6.24      空き家をどう扱うかは持ち主の特権だ 【カモナマイハウス】


                     
カモナマイハウス (単行本) [ 重松清 ]
評価:3
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■ヒトコト感想
空き家をメンテナンスする仕事に携わる孝夫。息子は元戦隊ヒーローの俳優で、今は売れない舞台役者となっている。妻の美沙は両親の介護疲れから燃え尽き症候群となっている。なんとも複雑な物語だ。空き家ビジネスは、もともと家に住んでいた人の思いまでもくみ取らなければならない。

こちらの感想としては、自分たちで引っ越して空き家にしておきながら、何か空き家を使って新しいビジネスを始めようとすると懐かしの家が…。と文句を言う。ずいぶん身勝手だと感じた。ビジネスとして割り切ることができないむずかしさ。介護ロスや売れない役者をやっている息子の問題など、50代後半の夫婦が感じる様々な問題の詰め合わせのような感じだ。

■ストーリー
不動産会社で空き家のメンテナンス業に携わる孝夫。両親の介護を終えた妻・美沙は、瀟洒な洋館で謎の婦人が執り行う「お茶会」に参加し、介護ロスを乗り越えつつあった。しかし、空き家になっている美沙の実家が、気鋭の空間リノベーターによって遺体安置所に改装されようとしていることを知り……。元戦隊ヒーローの息子・ケンゾー、ケンゾーを推す70代の3人娘「追っかけセブン」など、個性豊かな面々が空き家を舞台に繰り広げる涙と笑いのドラマ、ここに開幕!

■感想
空き家のメンテナンスを行う孝夫。定期的に空気の入れ替えや家のメンテナンスを行い、持ち主が戻ってきやすい状況を作る仕事だ。ライバルの空き家ビジネスを行う若い起業家は、新しいアイデアで空き家ビジネスを成功させようとしている。

日本には空き家が数多くあり、これからもっと空き家は増えるということらしい。その空き家をどのように効果的に活かすのか。画期的なビジネスは、火葬される前の死体の安置所として空き家を使うという案だ。遺族が遺体と数日過ごす簡易ホテルのような扱いだ。

自分たちが住んでいた家が遺体の安置所に使われることに拒否感を示す者がいる。自分たちは引っ越して空き家となった家の管理者の思いは無視して、自分の思い出だけを優先しているように思えた。そんなに大事な家なら引っ越さずに住んでいればよい。

なんなら、自分が買い取れば良い。それをせずに文句ばかり言うのは非常に違和感を覚えたが、作中ではその主張がもっともだということで支持されている。ビジネスライクに決断する持ち主の方が正しいように思えた。

息子の追っかけをしている70代の3人娘や、お茶会を開催する謎の婦人など、年齢層の高い登場人物ばかりだ。主人公が50代であり、若造扱いなのが若き起業家。孝夫が人生経験豊富な人々との交流により変わっていく。介護ロスなど、すでに介護も終わっているという50代後半というのが本作のポイントだろう。

若者がこの作品を読んでもあまり共感できないかもしれない。自分の両親がこんな思いでいるというのを感じるのにはよいのかもしれないが…。

共感できる世代は限られている。



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