居酒屋「一服亭」の四季 


 2023.9.8      「猟奇的推理」ではなく「料理的推理」だ 【居酒屋「一服亭」の四季】

                     
居酒屋「一服亭」の四季 [ 東川篤哉 ]
評価:2.5
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■ヒトコト感想
「純喫茶「一服堂」の四季」の続編的な扱いになるのだろう。前作が純喫茶であったのが、今回は居酒屋となる。安楽椅子探偵である安楽ヨリ子は二代目となり事件を推理する。居酒屋ということでヨリ子が酒を飲み酔っぱらうというのが定番パターンだ。事件の傾向としてすべてが猟奇的殺人というのも特徴だろう。

居酒屋で最初に出される料理から相談者が推理するのだが、それがまったく的外れな推理へ誘導するというのが良い。すべてをひっくり返す推理をヨリ子が披露する。人見知りであるが、酒を飲むことで饒舌となり鋭い推理を展開する。設定は面白いが、猟奇的殺人の内容とトリックがかなり強引なのでミステリーとして特別な印象はない。

■ストーリー
鎌倉の路地裏でひっそりと営まれる居酒屋「一服亭」。人見知りな女将は、実はとんでもない名探偵! 2代目・安楽ヨリ子見参。「猟奇的推理」ではありません。「料理的推理」ですわ!

■感想
純喫茶から居酒屋に変更された「一服堂」。二代目安楽ヨリ子と初代の関係性は語られていない。猟奇的殺人が発生し、それを安楽ヨリ子が安楽椅子探偵として話を聞くだけで推理してしまう。狂言回し役は固定されておらず、様々な人物が登場してくる。

ヨリ子を紹介するのは出版社の編集者である君鳥。そこに女刑事や店員やサラリーマンなどが絡んでくる。事件の凄惨さに比べると、全体としてはコメディ色が強い。ヨリ子のキャラが極度の人見知りからスタートし、最後は酔ってベロベロになるというのが大きいのだろう。

密室の中にある四肢が切断された胴の遺体がある。鉄格子がはめられた窓から胴体を取り出すことが不可能な状態で、胴体とバラバラにされた手足は部屋の外で見つかった。密室から手足を切り取られた胴体をどのようにして外に出したのか。

頭の中で想像すると強烈な絵ではあるが、それを安楽ヨリ子は話を聞いただけであっさりと推理している。その他にも、片足だけを切り取られた死体など、犯人候補のアリバイがある状態でどのようにしてアリバイを崩してトリックを解明するのかがポイントだ。

「猟奇的推理」ではなく「料理的推理」というのが面白い。居酒屋で出される料理から、相談者は推理を展開する。かなり強引だが、その料理は相談者に誤った推理を展開させるためだけに存在している。相談者の推理をヨリ子が罵倒する。

最初は人見知りでまともに会話ができない状態のヨリ子が、酒が進むうちに饒舌となり、ヨリ子が正しい推理を展開する。シリーズとしての面白さは猟奇的殺人のトリック解明なのだが、それがイマイチなのがもったいない気がした

。 シリーズ化されるか微妙だ。



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