2023.8.18 長々と続くロック描写が唯一の欠点【犬王】
犬王 [ 古川日出男 ]
評価:3
■ヒトコト感想
時代劇のアニメ。まったく予備知識なしに見たのだが、「夜は短し歩けよ乙女」の監督が作った作品のようだ。キャラクターは松本大洋がデザインしている。確かに映像的なインパクトがあり中盤までは引き付けられる内容だ。実在の能楽師の犬王を描いている。序盤では犬王は異形の人として描かれていたが、呪いが解けるにつれて普通の人間に戻っていく。
実際に犬王は当時の人々に熱狂的な人気があったようで、それをロックスターのような描写で表現している。非常に残念なのは、映像は素晴らしいのだがこのロック描写だけは非常に退屈だった。長々と続くロック描写。これがなければすばらしい作品だったという感想だ。声優も素晴らしいだけに惜しい作品だ。
■ストーリー
室町の京の都、猿楽の一座に生まれた異形の子、犬王。周囲に疎まれ、その顔は瓢箪の面で隠された。ある日犬王は、平家の呪いで盲目になった琵琶法師の少年・友魚と出会う。名よりも先に、歌と舞を交わす二人。友魚は琵琶の弦を弾き、犬王は足を踏み鳴らす。一瞬にして拡がる、二人だけの呼吸、二人だけの世界。「ここから始まるんだ俺たちは!」壮絶な運命すら楽しみ、力強い舞で自らの人生を切り拓く犬王。
呪いの真相を求め、琵琶を掻き鳴らし異界と共振する友魚。乱世を生き抜くためのバディとなった二人は、お互いの才能を開花させ、唯一無二のエンターテイナーとしての人々を熱狂させていく。頂点を極めた二人を待ち受けるものとは――?歴史に隠された実在の能楽師=ポップスター・犬王と友魚から生まれた、時を超えた友情の物語。
■感想
実在した能楽師を描いた作品。異形の人ということで、犬王の顔は怪物風なので仮面を被り、片手だけが異様に長い。実際の犬王がどうかはわからないが、非常に惹かれる設定だ。盲目の琵琶法師と犬王のコンビが既存の能楽の域を超えていたということなのだろう。
中盤までは犬王の境遇や琵琶法師の生い立ちが語られている。特徴的な絵柄とキャラクター。そして、犬王のリズミカルでヘンテコな動き。まさに目を奪われるというか、一度見たら忘れられないほどのインパクトのある作品だ。
中盤で琵琶法師と犬王のロックスター描写がある。これは当時の能楽として犬王がずば抜けて素晴らしいことを表現したいのだろうが…。猛烈に無駄で長く感じた。ここにきて突然、絵柄が単調になりつまらなくなる。そして、ロックの音楽が一本調子でつまらない。
歌詞もありきたりで退屈だ。この中盤でのロックの場面で一気に冷めてしまった。後半は多少盛り返したとしても、ロックの描写がちょくちょく登場してくるのだが、そのたびに退屈さを感じてしまう。
終盤では呪いで異形の形となった犬王の呪いが解け、普通の人になっていく。まるでダンサーのように軽やかにダンスをする。ただ、相変わらずのロック描写は退屈ではある。犬王や琵琶法師のその後が語られており、印象的ではある。
仮にロック描写をもっと違ったものにしていたら、ものすごい作品になっていただろう。下手したら中盤のロック描写で見るのを止めてしまう可能性すらある。序盤での犬王が登場したシーンでのワクワク感は最後までもたなかった。
非常に惜しい作品だ。
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