生きる LIVING [ オリヴァー・ハーマナス ]
評価:3
■ヒトコト感想
日本版の「生きる」は大昔に見た覚えがある。そのハリウッド版ということで、雪降る中でブランコに揺られながら、主人公が歌を口ずさむシーンは同じだ。役所の課長であるロドニーが本作の主役だ。堅物で周りから近づきづらい人物と思われているロドニー。他の役所のメンバーもできるだけめんどくさい仕事はしない主義で、嫌な仕事は他の課に回すよう伝えるのだが…。
そこに汚水まみれの資材置き場に子供たちの遊び場を作ってほしいという陳情が来る。陳情に対して、いつものたらい回しをするのだが…。ロドニーは末期がんであり寿命は長くて九か月と知ると、自分の生き方を見直すのだが…。ロドニーが気持ちを変える瞬間というのが、これというのがないように感じた。
■ストーリー
1953年のロンドン。若いピーター・ウェイクリングは市役所の市民課に就職した。課長であるロドニー・ウィリアムズは大変な堅物(かたぶつ)で他人を寄せ付けず、部下たちは冗談を言うことも控えていた。ある日、陳情書を持ち込む婦人たち。汚水まみれの小さな資材置き場を子供たちの遊び場に変えて欲しいという陳情で、彼女たちは何ヶ月もたらい回しにされながら市役所に通い続けていた。しかし、無表情なまま陳情書を未決の棚に放り込むロドニー。
ある日、医者から末期ガンを宣告されるロドニー。寿命は半年か長くて九ヶ月だった。同居の息子夫婦に話そうとするが、日頃から疎遠で言いそびれるロドニー。彼は初めて役所を無断欠勤し、海辺のリゾート地に行って羽目を外した。だが、性に合わずにロンドンに戻り、出勤するふりをして町をさ迷い歩くロドニー。
■感想
新たに役所に入ったピーターは、ひな壇で苦み走った表情で書類を処理するロドニーを見て困惑する。様々な市民からの訴えをすべて他の課に回したりする。他の課も同様に市民課に回したりもする。よくある役所のたらい回しの流れだ。
ピーターからするとロドニーたちの対処は違和感がある。が、そのうちピーターも役所の流儀に流されていく。複数の主婦たちが子供たちのために汚水まみれの資材置き場を遊び場にしてもらうような陳情をだす。それをロドニーはあっさりと握りつぶしてしまう。
ロドニーは医者から末期がんを宣告される。寿命は半年で、長くて九か月といわれる。絶望的な気持ちになるロドニー。貯金を下ろして役所をさぼり自由を満喫しようとするのだが…。転職した元部下の若い女の子と映画館へ行ったり食事をしたり。
今までできなかったことをするのだが気持ちは満たされない。ロドニーの行動は理解できる。自分が死ぬと分かったら仕事をせずに好きなことをしようと思うのは当然だろう。そこからロドニーの気持ちは変化していく。
急に役所に戻り、遊び場を作る陳情を処理しようとする。周りの部下たちが面喰う場面は最高だ。それまでの役所の慣習をぶち破るように、バイタリティ溢れる行動をとるロドニー。その後、場面はロドニーの葬式の場面となる。
ロドニーをしのぶ場面では、様々な人が思い出を語る。ロドニーが遊び場を作り上げたということで、様々な人々に感謝される。ロドニーの最後の仕事に感化され、ピーターは新しい課長に進言し新しい課長も同じ思いでいるのだが…。結局、今までと同じ役所の対応となるのが悲しい場面だ。
物悲しいラストだ。