2023.11.11 父娘の宇宙放浪生活【ハイ・ライフ】
ハイ・ライフ [DVD]
評価:3
■ヒトコト感想
冒頭、宇宙船の中でモンテと生まれたばかりの娘ウィローの二人っきりの生活が描かれている。他の乗組員はいた形跡はあるが、皆死んでいるようだ。小さな赤ちゃんと男の二人だけ。なんとか生きることはできるが、孤独な雰囲気が強い。どこか「アニアーラ」に近いが、アニアーラは何千人もの人がいる状態で宇宙をさまよっている。本作はモンテと赤ちゃんだけ。なぜそんな状態になったかが語られる。
犯罪者ばかりを集めた宇宙船での実験がことの発端だった。宇宙で生まれたウィローは様々な実験の最終成果として生まれていた。恐ろしい世界だ。犯罪者ばかりを集めて実験を長期間行う宇宙船なんてのは恐ろしくて仕方がない。最終的にトラブルになるのは目に見えている。
■ストーリー
太陽系をはるかに超え宇宙を突き進む一隻の宇宙船「7」。その船内でモンテ(ロバート・パティンソン)は生まれたばかりの娘ウィローと暮らしている。宇宙船の9人の乗組員は、全員が死刑や終身刑の判決を受けた重犯罪者たち。モンテたちは刑の免除と引き換えに、美しき科学者・ディブス医師(ジュリエット・ビノシュ)が指揮する“人間の性"にまつわる秘密の実験に参加したのだった。しかし、地球を離れて3年以上が経ち、究極の密室で終わり無き旅を続ける彼らの精神は、もはや限界に達しようとしていた――。
■感想
犯罪者たちが刑の免除を引き換えに危険な宇宙の実験に挑む。地球に戻る見込みはあったのだろうか。科学者のディブスにより人間の性の実験が行われる。自給自足可能な宇宙船ということで、乗組員がいなくとも自立的に動き続ける。
中盤でのディブス医師の実験により混乱していく犯罪者たちは強烈だ。秩序が保たれていたのは最初だけ。やはりどこか精神的な負荷と、そもそもの素養があったのだろう。一部では見るに堪えないような殺し合いが起きたりもする。
宇宙で妊娠し出産することが可能なのか。モンテは次々と脱落していく仲間の中で、ひとりどこか一歩線を引いた行動をとっている。宇宙船から脱出しようとして失敗する者。すべてを諦め、畑の肥やしとなるもの。地球へ戻れる希望がなければ自殺に流れるのは自然のことなのかもしれない。
コンピュータ制御の宇宙船は乗組員がいなくとも問題なく宇宙を漂い続ける。このあたり「アニアーラ」の気の遠くなるような宇宙船内部での生活に雰囲気が近いのかもしれない。
モンテとウィローとのふたりの生活。後半では赤ちゃんであったウィローが美しい少女に成長している。宇宙空間をさまよう途中で、同じような宇宙船と出会い、そしてドッキングする。ここで衝撃的なのはモンテが別の宇宙船に入ってみるとそこには犬しかいなかった部分だ。
人間はどうしたのか?という説明はいっさいない。犬だけの宇宙船は何があったのかわからないだけに恐ろしすぎる。宇宙船がさまようタイプの物語は、未来に希望がもてない終わりであることは間違いない。
陰鬱な気分になる作品だ。
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