ハレルヤ! 


 2022.5.3      中年となった仲間たちそれぞれの悲哀 【ハレルヤ!】

                     
ハレルヤ! / 重松清
評価:3
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■ヒトコト感想
学生時代にバンド活動をしていた男女5人組が、それぞれ社会人となり時を経て再会する。学生時代のキラキラ輝いていたあいつが、というのが定番のパターンだろう。忌野キヨシローのファンであった者たちが、キヨシローの死を経験し、今の自分たちの現状を考える。主婦になった者や、ローカルタレントとして活躍している者。

リストラされ家族との関係がうまくいっていない者。離婚し一匹狼として仕事にまい進する者。それぞれの人生がある。ありがちかもしれないが、人生とはこんなモノなのだろう。現状にどんな不満をもったとしても、こんなものだと妥協するしかない。本作は、中年たちを勇気づけるような類の作品ではない。人生を受け入れるべきだと言っているような気がした。

■ストーリー
学生の頃ブルース・ブラザーズに憧れてバンド活動を始めた男女五人組。皆が社会人になり、解散してしまってからのメンバーたちは、それぞれ子育て、仕事、恋愛に奮闘する別々の人生を歩んで、四十六歳になっていた。輝いていた青春時代とは違う「人生の後半戦」。思うようにいかず鬱々としていたある日、あのキヨシローが旅立った――。音楽界伝説の男の死をきっかけに、ばらばらだった五人の絆が再び繋がり始める。

■感想
ブルースブラザーズ風のバンドを学生時代に組んでいた5人組が、中年になってからの現在を描いている。青春時代の輝かしさから一転、ごく普通の中年となっている。作中に登場する人物たちは幸せいっぱいというパターンはない。

遅くに結婚し双子の主婦となった女は、双子の世話に必死となっている。作中では夫との離婚が近いという描かれ方をしている。どこか不幸なにおいを感じさせるのだが…。青春時代の自由さと比較すると確かに不自由かもしれないが、それはそれで今も幸せなのでは?と思ってしまった。

リストラされた男や、離婚し仕事に力を注ぐしかない男など、晩年となりどこかみじめな雰囲気が描かれているが…。必ずしも青春時代と同じ濃度でロックを愛する必要はないし、キヨシローの死に熱く悲しむ必要はないように思えた。

それぞれの人生として、いまさらリストラだとか離婚というのは珍しくもない。ごくありふれた中年の人生だろう。作中でもそれが不幸という描かれ方はしていない。それでも、中年の仲間たちと再会することで、どこか心の中での小さな変化があるのが描かれている。

ふと、自分の青春時代のキラキラした輝きと現在を比べてみたりもした。作中のようにどこか青春時代に想像した中年と現在の違いに愕然となったりもするのだが…。それはそれで受け入れるようにできている。どれだけ現状に満足していないとしても…。

鬱々とした日々とまでいかないが…。本作のように人生の後半戦として何か変化をもとめたりというのは、平凡な人生の中ではないのかもしれない。物語の中での架空の出来事として受け入れてしまった。

必要以上に中年の現在を卑下しすぎているように感じた。



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