博士はオカルトを信じない (一般書 450) [ 東川篤哉 ]
評価:2.5
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■ヒトコト感想
東川篤哉の新シリーズ。丘晴人という中学生が主人公だ。いかにも作者の作品にでてくるようなキャラの名前だ。晴人は両親が探偵事務所を営んでおり、ダメな父親が事件を引っ掻き回す。実際に事件を解決するのは、安楽椅子探偵としてヘンテコな発明を生み出し続ける暁ヒカル博士だ。オカルトに対して科学的な博士が回答を示す。
京極夏彦の京極堂シリーズでもあるような作品のテイストではあるが、シリアス度が異なっている。オカルト現象と思わしき事件が発生したが、それは科学的にヒカル博士が証明する。オカルト部分がミステリーのトリックとなるのだが、そこに目新しさはない。キャラクターと設定でどこまで楽しむことができるかにかかっている。
■ストーリー
丘晴人は、君立市君乃町に住む中学2年生。両親が「有限会社オカリナ探偵局」という私立探偵事務所を営んでいるため、町の有象無象の面倒事や困りごとや事件が舞い込む。両親の手伝いで事件に立ち会う中で、晴人が目にした数々の不思議な事件。これって、幽霊がやったとしか考えられない――。事件解決の糸口を見いだせない晴人がひょんなことから出会ったのは、廃墟に住む、白衣を着た女博士。「ひらめき研究所」の看板を掲げながら、謎の発明に日夜没頭する博士に事件を相談するのだが――。その事件の犯人は、幽霊? それとも人間?
■感想
東川篤哉の新シリーズとしてスタートした本作。オカルトチックな事件が起こり、それに関わることになった晴人が暁ヒカル博士に助けを求める流れだ。ヒカルがヘンテコな発明品をしょっちゅう作成し、それを晴人にお披露目するのが定番かもしれない。
博士はアラサー女子ということで、ヒカルと呼ばれると反応しないが、博士と呼ばれると反応するというおかしな習性がある。サブタイトルに「あの世からの声」だとか「幽体離脱の殺人」なんてのがついているが、中身はなんてことないトリックでしかない。あえてオカルト風味にしている。
印象的なのは「あの世からの声」だ。病気の女性が口を開けたまま謎の老婆の声をだす。まさに老婆が乗り移ったように若い女性から声が聞こえる。後付けであってもいわくありげな雰囲気が良い。そして、病気の女性の口から出た声にはどのようなトリックがあるのか。
これはさすがに驚きのトリックだった。口を動かさずに口から声が出ているという部分で、腹話術だとかテープだとかを想定したのだが…。現代の様々な機器を駆使ししてトリックを成立させているのがよい。
「赤いワンピースの女」は典型的なアリバイトリックだ。別に赤いワンピースである必要はないのだが、赤いワンピースというだけでオカルト感が増すから不思議だ。蓋を開けてみれば、古典的によくある鏡のトリックではあるのだが、それを感じさせない前振りや全体の構成がある。
本作のようにトリックはありきたりかもしれないが、それが発生するバックグラウンドや周りの人間関係の変化により、いかようにも物語の雰囲気を変えることができるのだろう。
シリーズとしては続いていくのだろう。