2022.7.7 人を癌にさせる細菌テロ 【ゲノムの方舟 上】
ゲノムの方舟 上 徳間書店 佐々木敏
評価:3
■ヒトコト感想
様々な要素が詰め込まれた作品。序盤では細菌テロが描かれており、そこから人権の話にまで。上巻の流れからはどのように展開していくのか不明だ。まだオバマが大統領になる前の作品なので、黒人や黄色人種などの差別も描かれている。初の黒人のアメリカ大統領になろうとするキング。謎の細菌テロにより、感染者は癌になり、それは人へ感染していく。細菌テロの封じ込めと人種や人権による問題が描かれている。
物語のカギを握るのは生物学者の井坂だろう。各国のスパイが重要人物扱いし、井坂の研究が軍事利用できることを暗示している。井坂の研究と序盤での細菌テロの関係性がどのように描かれていくのか。上巻でかなり広範囲に広げた風呂敷をどのようにして下巻でたたむのかがポイントだろう。
■ストーリー
世界人口が六十億を超え、人口爆発対策のためにジュネーブで開かれたWHO総会がテロリストに襲われた。やがて帰国した医学関係者の間に奇妙な病気が広がる…。その正体は?気鋭の遺伝子工学者井坂博史は、生物テロの影を見るのだが…。
■感想
何がカギとなるのか今の段階ではまったくわからない作品だ。序盤から謎の細菌テロが発生する。WHOの総会に参加した者が感染した癌になる細菌。それは人々に感染し、混乱を巻き起こす。この部分とは別に人類の起源や、人種による差別、人権の話や次期アメリカ大統領を目指す権力争いなどが描かれている。
その中で、井坂がポイントになるのは間違いない。生物学者が研究する何かが、世界各国の軍事関係者に注目されている。ミステリアスな物語ではあるが、要素が多すぎてどうなっていくのかが不明な展開だ。
致死率の高い細菌をどのようにして隔離するのか。どこか「アウトブレイク」的な流れもありながら、種の起源の話ともなる。スパイ的な流れもある。タイトルから想像すると、生物の起源を何かしら脅かすような研究を井坂がしていたということか。
本来の研究とは別の研究成果がでてしまい、それが軍事利用できるということなのか。上巻ではまだ見えてこない。世界の人口が爆発した後になにが起きるのか。人口が爆発することで何が悪いのか。先進国の富を途上国へ分配することが悪と語られている。
作者の豊富な知識が様々な分野へ爆発するような作品だ。時代的な影響なのか偏った考えが主張されたりもしている。白人社会は黒人も黄色人種もどちらも平等に差別されていたが、黄色人種は自力でそれを払拭し、高い地位を手に入れたらしい。
なんだかかなりあからさまで偏った考えだ。オバマが大統領となる以前なので、物語として黒人の願いは黒人の大統領が登場することになっている。細菌テロの恐ろしさと人類の起源というか、差別意識などにも鋭く突っ込んだ作品であることは間違いない。
下巻でどのような流れになるのか興味がわいてきた。
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