ゲノムの方舟 下 


 2022.9.21      特定の人種にだけ効果のある細菌兵器 【ゲノムの方舟 下】

                     
ゲノムの方舟(下) 徳間文庫/佐々木敏(著者)
評価:3
■ヒトコト感想
上巻で発展途上国の人口爆発により先進国が割りを食う話が描かれていた。そこから、下巻では世界的な人口増加を抑えるためにある人種にだけ効果のある最近兵器をまき散らす物語となっている。特定の人種のみ影響があるのが恐ろしい。アメリカのシェローダン一族の野望は私利私欲ではない。

地球規模で考えての、ある意味地球を浄化することにあるのだろう。それを防ぐため、対抗処置としてシェローダン一族にだけ効果のある最近兵器を井坂が作ることになる。現実的には、テロ組織がNYに細菌爆弾をもったまま入り込むのはさすがに不可能だろうが…。多数の都市伝説をモチーフとした本作。SARSが猛威を振るっていた時期なので、SARSを最近兵器と仮定してのことなのだろうが…。近年のコロナに対しては白人たちへの対抗策のように思えてしまった。

■ストーリー
米大統領キングは、国防長官ガーランドらの『ユダのいない晩餐』計画の実行をためらっていた。そして、参加を拒んだ遺伝子工学者井坂が誘拐される。彼の研究の軍事利用を狙った犯行か!?ヒトゲノム解読の成果をふまえた国際サスペンス大作。

■感想
上巻で、これでもかと人口爆発の危機について語られていた。細菌兵器の恐怖や、人種による違いなども描かれている。そこから、後半は遺伝子工学者である井坂が誘拐され、シェローダン一族とガーランドが画策する計画への対抗策が描かれている。

地球規模で考えたら、もしかしたらやろうとしていることは正しいのかもしれない。人口爆発を抑制せよとインドやアフリカの発展途上国へ言ったとしても、それを聞き入れられることはない。乳幼児の死亡率が上がることが人口抑制につながるのは知らなかった。

戦争で人が死ぬよりも病気で死ぬ方が心理的な負担が少ないのは確かだ。大量破壊兵器で人口抑制はできない。継続的に見えない影響を与えるのは特定の人種にだけ効果のある細菌兵器を蔓延させることだ。本作はSARSが流行った時期の作品なので、SARSは中国人にだけターゲットにした細菌兵器だということなのだろう。

奇しくも近年のコロナ騒ぎは中国が開発したと都市伝説がある。コロナは実は白人にだけ効果のある細菌兵器を作るはずが、誤ってアジア人にも多少の効果のある細菌兵器となってしまったのか。

抑止力としてシェローダン一族にだけ効果のある細菌兵器を作り出すことに成功する井坂。ここからは、それまでのシリアスな展開から一気にアクション風味が強くなる。キューバの潜水艦に乗りアメリカが金塊をもちだすために用意した秘密のトンネルを利用してNYのビルに入り込む。

潜水艦を2台用意して、1台目は自己犠牲の精神から2台目を活かすための動きをする。強烈なインパクトがあるのは、種の保存のためには、どのような手段でも人はとりうるということだ。

未来を予言するような作品だ。



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