2024.12.26      「三体」の元ネタになったような短編 【円】


                     
円 劉慈欣短篇集【電子書籍】[ 劉慈欣 ]
評価:2.5
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■ヒトコト感想
あの「三体」の作者の短編集。印象的なSF短編もあれば、そうでもないよくわからないた短編もある。短編の中には三体の本編で登場した仕組みの元ネタのような作品もある。極端に割れないシャボン玉の物語や、余命わずかとなった教師が子供たちに行う最後の授業など、印象的な作品は多い。特に物語の中で、広大な宇宙では人類よりもはるかに優れた文明をもつ者たちが登場してくる。これこそが、三体で表現された異星人たちの元ネタになるのだろう。

3次元が当たり前の人類にとって、文明の進化は高次元に進化していくというのがすさまじい。人類が恐竜の世界に支配されるが、それよりもさらに高度な文明をもつ神のような存在が登場したりと、バラエティに富んでいる。

■ストーリー
円周率の中に不老不死の秘密がある――10万桁まで円周率を求めよという秦の始皇帝の命を受け、荊軻(けいか)は300万の兵を借りて前代未聞の人列計算機を起動した! 第50回星雲賞に輝く「円」。麻薬密輸のために驚愕の秘密兵器を投入するデビュー短篇「鯨歌」。貧しい村で子どもたちの教育に人生を捧げてきた教師の“最後の授業"が信じられない結果をもたらす「郷村教師」。

漢詩に魅せられた超高度な異星種属が、李白を超えるべく、あまりにも壮大なプロジェクトを立ち上げる「詩雲」。その他、もうひとつの五輪を描く「栄光と夢」、少女の夢が世界を変える「円円のシャボン玉」など、全13篇。中国SF界の至宝・劉慈欣の精髄を集める、日本初の短篇集。

■感想
印象的なのは、やはり表題作でもある「円」だ。秦の時代に始皇帝から10万桁の円周率を求めよと命令される。計算するためには300万の兵を使い人列計算機を作ろうとする。これこそ、三体ゲームの中で存在した人間計算機そのままだ。

どれだけ優秀な兵士だろうが、0と1を一人の兵士が表現し、それをコンピュータの1ビットとみなして計算する。理論上は正しいのだろうが、1ビットをひとりの兵士がやるというその発想がすさまじい。少しでもエラーが起きるとその兵士の首を切る。命がけの人間計算機だ。

「円円のシャボン玉」も印象的だ。究極に割れにくいシャボン液が開発された。割れないので巨大化させることは可能で、地面に到達しても割れることはない。となると、町全体をシャボン玉の透明な膜が覆うようなこともある。

空気を通さずに光は増幅され、シャボン玉の中は地獄と化す。この技術の応用を考えるのだが…。町全体をシャボン玉が覆ってしまうと、町中の人間が死に絶える可能性すらある。それを飢饉に苦しむ土地へ雨を降らせるために使おうとする。夢のあるシャボン玉だ。

「詩雲」は強烈だ。人類は恐竜文明に支配され、恐竜たちの食料となっている。そんな世界で、李白の過去の詩が文明的にはるかに進化した者たちに感銘を与える。そして、高度な文明をもつ神のような存在は、どのようにして詩を作るのか。最終的な結論がすさまじい。

結局は漢字の組み合わせでしかないので、すべてのパターンの詩を作ってしまおうと考えてしまう。すべての漢字を詩に当てはめると何パターンの詩が作られることになるのか。量子コンピュータで計算した結果を保存するハードディスクの容量のすさまじさが印象的だ。

常人では考えつかないSF短編ばかりだ。



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