ドライブ・マイ・カー


 2023.2.21     棒読みの演劇のセリフが気になる【ドライブ・マイ・カー】

                     
ドライブ・マイ・カー インターナショナル版
評価:3

■ヒトコト感想
村上春樹の「女のいない男たち」内の短編作品を原作とする本作。かなり原作とは異なったストーリーとなっているが、出てくるセリフはいかにも村上春樹らしい。脚本のことをテキストと読むのは、村上春樹の作品でよく登場してくる読み方だ。主役が俳優で演出家の家福なので、作中には演劇の場面や本の読み合わせの場面が多数登場してくる。

それが、あえて演出なのか、棒読みでの演技を求める。このシーンが強烈にインパクトがある。そして、作品の全体の雰囲気を決めている。話題になった作品ではあるが、特別面白いというのはない。演劇も多言語で演じられ、これの何が良いのかまったくわからなかった。非常に難解な作品であり、原作の方がまだわかりやすかった。

■ストーリー
舞台俳優であり演出家の家福(かふく)は、愛する妻の音(おと)と満ち足りた日々を送っていた。しかし、音は秘密を残して突然この世からいなくなってしまう。2年後、広島での演劇祭に愛車で向かった家福は、ある過去を抱える寡黙な専属ドライバーのみさきと出会う。悲しみと“打ち明けられることのなかった秘密"に苛まれてきた家福は、みさきと過ごすなかであることに気づかされていく――。

■感想
原作は読んだことがある。原作とはかなり雰囲気は異なっている。若手俳優の高槻が本作のポイントだろう。家福は規則正しく落ち着いた大人の男だ。愛車を人に運転されることを嫌がるタイプだが、若い女性をドライバーとして雇う。

ほぼ全編、演劇の要素がある。特に本読みのシーンでは家福がひたすらセリフを棒読みすることを求める。そのため、なんだか小難しい内容の作品が、さらに退屈に感じられるのだろう。中盤以降では高槻がすぐに瞬間湯沸かし器的に怒りを示すのが後で問題になる。

家福は車の中でセリフの練習をする。相手はテープにとった妻の声だ。運転手は何も語らずただ運転し続ける。家福はテープのセリフに合わせてセリフを大声で話す。ある意味異様な空間だ。そこから稽古場に行くと今度は俳優たちが多言語でセリフを言い合う。

そのセリフも理解できる日本語は平板で棒読みだ。家福がそう読むように強制しているのだが…。高槻は今の状況に不安を覚え、不満のようにも見える。家福が全ての権力を握ってはいるが、家福が常に穏やかなのでスパルタ式には見えない。

本作はかなり見る人を選ぶだろう。村上春樹の小説に慣れている自分であっても、やはりこのストーリーに面白さを見出すことは難しかった。小難しく演劇に精通していればまた違った感想を持つのかもしれない。男女の関係を描いているようではあるのだが、家福は妻以外とはセックスしない。

原作ではドライバーの若い女に対して何事か考える描写があったのだが…。本作ではそれはない。高槻と家福の関係がメインで、ラストでは高槻が暴力事件を起こして逮捕されてしまうという衝撃的な展開となる。

話題作なので見てみたのだが…。



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