ぼんぼん彩句 


 2023.11.29      俳句を元に創作された短編集 【ぼんぼん彩句】

                     
ぼんぼん彩句 [ 宮部みゆき ]
評価:3
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■ヒトコト感想
俳句から物語を想像する。素人にはなぜその俳句からこんな物語が想像できるのかまったくわからない。俳句のことは抜きにして物語としては、強烈に嫌な雰囲気のある物語となっている。女の嫉妬というか嫌な部分が凝縮されたような短編が続いていく。読後感が悪い。デートDVやストーカーなど嫌な気持ちになる短編となっている。

特に二話目の「鶏頭」は強烈だ。結婚した夫と家族には秘密があった。それは、夫の幼馴染のことを今でも忘れていないことだった。その幼馴染は中学生で死んでいたのだが、いまだに写真をもち、家族も夫がその幼馴染と結婚すると思いこんでいた。こんな家族に嫁入りするのは辛い。異常な家族の話は強烈なインパクトがある。

■ストーリー
俳句と小説の新しい出会い。17音の奥に潜む繊細で彩り豊かな12の物語。宮部みゆきが深い洞察力と鑑賞力で12の俳句から紡ぎだした玉手箱。社会派からホラー、SFに至るまで、あらゆるジャンルに足跡を残してきた宮部文学の新たなる挑戦!

■感想
宮部みゆきの三島屋変調シリーズなどにある幽霊的な恐ろしさよりも、人間の方が恐ろしいとあらためて感じさせる作品ばかりだ。娘と付き合った彼氏はさわやかでカッコいい彼氏だったが、娘の様子が段々とおかしくなってくる。実は彼氏はデートDVの男だった。

モラハラ的であり、激しい嫉妬の塊である男。娘はそんな男のために健気に尽くすのだが…。行き過ぎた嫉妬は恐ろしい。はたから見ると良い彼氏のように見えるのがたちが悪い。

家族内のイジメの作品も強烈だ。次女だけが母親や三姉妹の三女にイジメられている。母親がそもそもイジメ相手を見つけることに心血を注いでいる。成人しそれぞれの生活を送っていても親戚が集まる場でイジメが再開する。

大人のそれも家族内部でのイジメというのは強烈だ。普通に考えれば母親からすると娘は可愛いものではないか?と思えるのだが…。次女が家族と縁を切り、ラストでは祖父からの遺産をしっかりと受け継いでいるのが救いがありよかった。

幼馴染と付き合っていると思い込み、傷害騒ぎを起こし、最後には自殺した兄の物語も強烈だ。家族は幼馴染と兄は付き合っており結婚するのかと思っていたが、幼馴染は別の人物と結婚した。その後、兄は幼馴染の元に向かい…。

内情としては勝手に兄が思い込んでいただけで、付き合ってもいなかった。ストーカーのようなことをしており、最後には自殺した。その葬式のあとの野辺送りの場面が描かれている。妹からすると兄に対しての複雑な思いが描かれている。

嫌な気分になる短編集だ。



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