ユーカリの木の蔭で 


 2021.9.24      落語や古典好きのための書評 【ユーカリの木の蔭で】

                     
ユーカリの木の蔭で [ 北村薫 ]
評価:2
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■ヒトコト感想
北村薫の読書エッセイ。読む前から分かっていたことだが、作者は古典が好きだ。限られて時間の中で、読める本の数は決まっている。だとしたら、古典だけを読んでいたい、というような人物なので、必然的に最近の作品について語られることはない。やはり想像通りの作品であった。登場してくるのは文豪ばかり。そのあたりに詳しくないので、その重大さがわからない。

ただ、なんとなくだが文豪が実はこんな本を書いていたのだというのを面白く感じることができた。作者は落語も好きらしい。落語についての作品のエッセイもある。エッセイの中には、ギリギリ自分が理解できる藩中の作品もある。それらについては作者独特の言い回しを楽しむといった感じだ。

■ストーリー
クイーン『ギリシャ棺の謎』から江戸の『誹風柳多留』へ、中山晋平“晋バカ大将”からシェークスピアへ―。本の達人が自由に連想を羽ばたかせる極上の読書エッセイ!

■感想
北村薫のエッセイ集。古典がメインであり、自分の中ではほぼなじみのない作品ばかりが続いていく。そんな中でも芥川龍之介についての作品が目立つ。多少は芥川龍之介の作品は読んだことがある。実は意外な一面があるなど、作者独自の解釈が語られている場面もある。

もしかしたら古典好きにとってはわりと当たり前のことなのかもしれないが、自分の中では新鮮な気持ちで読むことができた。死ぬまでに読める本の数は決まっているからと、古典ばかりを読みたいという作者だけにそのこだわりを感じることのできるラインナップだ。

文豪たちの面白小話が描かれている場面もある。その作家を訪ねていくと必ず女中がでてきて留守だという。その後、ゆっくりと歩いていると、慌てて女中が呼びに来るらしい。これはおそらく、常に居留守を使い女中が誰が来たと作家に告げると、会っても問題ないのであれば女中が慌てて呼びに来るという流れなのだろう。

今とは違って、スマホで連絡というわけにもいかず、玄関先で女中が部屋に入ってから留守です、なんてことを言えばあからさまに居留守とバレるので常に留守としているのだろう。

古典以外にも落語好きの作者だけに落語についても語られている。落語についてはほとんど知識がない。ただ、笑点レベルの落語家ならなんとなくわかる程度だ。そんな状態ではあるが、それなりに楽しむことができた。

有名な落語であれば聞いたことはあるし、内容は何となく知っている。作者の趣味趣向を理解した上で読むのであればまったく問題ないだろう。何も知らずに普通の書評のような気持ちで読むと、かなり痛い目を見るかもしれない。

読書エッセイとして古典好きの色がこれでもかと表現されている。



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