四畳半タイムマシンブルース 


 2021.1.18      映画と小説の融合 【四畳半タイムマシンブルース】

                     
四畳半タイムマシンブルース [ 森見登美彦 ]
評価:3
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■ヒトコト感想
「サマータイムマシンブルース」のストーリーを「四畳半神話大系」のメンツで描く。最初はそのことを知らずに普通に読み進めてきたのだが、途中でどこかで見たことのあるストーリーだと気づいた。そして仕組みに気づくと、タイムマシンを使った奇妙な時間的なからくりを楽しむことができた。キャラは四畳半~独特の女子に対しておく手でちょっと偏屈な者たちばかり。

映画のサマータイムマシン~のキャラとはだいぶ異なるのだが、それでも雰囲気が似通ったものになっている。ちょっとしたラブストーリー的雰囲気あり、タイムパラドックスを無視した流れは良い。100年もの昔から現代と、そして25年前まで。とんでもない時代の変遷を生きてきたリモコンの物語ともいえる。

■ストーリー
炎熱地獄と化した真夏の京都で、学生アパートに唯一のエアコンが動かなくなった。妖怪のごとき悪友・小津が昨夜リモコンを水没させたのだ。残りの夏をどうやって過ごせというのか?「私」がひそかに想いを寄せるクールビューティ・明石さんと対策を協議しているとき、なんともモッサリした風貌の男子学生が現れた。

なんと彼は25年後の未来からタイムマシンに乗ってやってきたという。そのとき「私」に天才的なひらめきが訪れた。このタイムマシンで昨日に戻って、壊れる前のリモコンを持ってくればいい!小津たちが昨日の世界を勝手気ままに改変するのを目の当たりにした「私」は、世界消滅の危機を予感する。『四畳半神話大系』と『サマータイムマシン・ブルース』が悪魔合体?小説家と劇作家の熱いコラボレーションが実現!

■感想
小説と映画がコラボした作品。サマータイムマシンブルースのストーリーに四畳半神話大系のキャラがコラボする。もともとはクーラーのリモコンが壊れたことで始まる物語。未来からやってきた田村くんのタイムマシンを使って過去の時代に戻り壊れる前のリモコンを持ってこようとする物語だ。

しょうもない理由でタイムマシンを使い、タイムパラドックスをすべて無視した流れが良い。同じ時代に未来からやってきた人物と今の人物と、同じ人物がふたりいるというのが良い。むちゃくちゃだが、それをいつの間にか受け入れている勢いがある。

現在の壊れたリモコンの代わりに過去のリモコンをとってこようとする。それがいつの間にか100年前の沼地にリモコンを落としてしまう。結局はもうクーラーを使わなくなる未来からリモコンをもってくることで事なきをえるのだが…。なんだかリモコンひとつに信じられないほど大掛かりなドタバタ劇がある。

当然ながらその途中では時空をゆがめてしまうような危機が多々ある。シャンプーがなくなったかと思いきや、実はタイムマシンで過去に戻っていた自分がシャンプーを持って帰っていた、というなんだかしょうもないドタバタもある。

そもそものことの発端は未来からやってきた田村くんだ。田村くんがタイムマシンをもってこなければ一連の問題は起きなかった。ラストでは田村くんの出自が明らかとなる。あこがれのマドンナの子供ということがはっきりし、その結婚相手が誰なのか、なんていうちょっとしたロマンスがある。

全体としてはサマータイムマシン~と同様にコメディ全開だ。さらには、四畳半~のキャラはコメディと相性抜群であり、ちょっと陰鬱でウジウジとしたキャラは物語に非常にマッチしている。

映画と小説との融合は珍しいが、本作は成功の部類に入るだろう。



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