夜明けまで眠らない 


 2021.9.7      元傭兵というだけで只者ではない感じがする 【夜明けまで眠らない】

                     
夜明けまで眠らない [ 大沢在昌 ]
評価:3
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■ヒトコト感想
元傭兵で現在はタクシー運転手である久我。客がタクシーに忘れた携帯電話をめぐり、ヤクザやアフリカの小国の兵士たちが暗躍する。そもそもの発端は、元同僚らしき男が残した携帯をヤクザに渡さずに持ち続けることで事件に巻き込まれていく。久我の傭兵としての能力の高さはすさまじく、複数のヤクザでも相手にならない。アフリカの小国のヌワンという戦闘部族だけを恐れる久我。

傭兵時代の経験で夜中にヌワンに襲われたことがあり、夜に眠れなくなる。夜中だけのタクシー運転手である久我が、過去の自分の仕事に関係し、ヌワンと再び対決することになる。ヌワンが人間の首を切り落とす戦闘部族というのが恐ろしい。戦国時代の武将の考え方に近いのかもしれない。

■ストーリー
タクシー運転手の久我は、血の匂いのする男性客を乗せた。かつてアフリカの小国で傭兵として戦っていた久我の同僚らしい。客は車内に携帯電話を残して姿を消した。その携帯を奪おうとする極道の手が迫り、久我は縁を切ったはずの激しい戦いの中に再び呑まれていく。疾走感みなぎる傑作ハードボイルド!

■感想
傭兵として死線を潜り抜けてきた男が、夜中専門のタクシー運転手として仕事をする。戦場での経験として、夜中寝ているうちに隣に寝ていた同僚の首がなくなっていたことがある。それはヌワンの仕業であり、その経験をしてからは久我は夜に眠ることができなくなった。

ヌワンの恐怖や戦場での戦いに比べると、日本でのヤクザとの攻防は生ぬるいのだろう。久我は警察に介入されることを必要以上に恐れながらも、ヤクザに対して暴力で脅すというアベコベの行動をとったりもする。

久我が手に入れた携帯をめぐり、ヤクザやアフリカの小国の外交官が絡んでくる。久我の正体を知らないヤクザは、久我に痛い目にあわされる。そして、ヌワンが日本にいることに気づいた久我は身を守るための行動をとる。

久我に関わりをもつ者たちが、次々と危険な目にあう。久我を要注意人物として調査していた刑事はヌワンに捕らえられてしまう。物語のポイントとしては久我やヤクザは日本の警察組織に逮捕されるという足かせがあるのだが、ヌワンにはない。その違いが行動の大胆さへとつながっている。

夜明けまで眠れない男・久我は、ヌワンに狙われることで、日本にいるにも関わらず戦場と同じような緊張感をもつことになる。ヌワンをうまく使おうとしたヤクザたちも、ヌワンが手に負えないとわかると、ヌワンの始末を久我にお願いしたりもする。

最終的にはヌワンの異常さにヤクザは逃げ出している。孤高の傭兵とアフリカの戦闘部族が日本にあるアフリカの小国の大使館内部で戦う。その後、戦いの場は外部へと移っていくのだが…。まるで日本が戦場になったようなラストの対決だ。

元傭兵というだけで只者ではない感じがする。



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