野球の国のアリス 


 2018.11.13      打つと3塁へ走る野球 【野球の国のアリス】

                     
野球の国のアリス (講談社文庫) [ 北村薫 ]
評価:2.5
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■ヒトコト感想
不思議の国のアリスをモチーフとした作品。新聞記者の宇佐木さんに連れられ、鏡の中に入ると、そこは左右が逆になった世界だった。左右が逆になるだけでなく野球のベースを回る動きまで逆になっている。1塁から回るのではなく、3塁から回るパターンだ。

野球好きな女の子アリスが中学になり野球ができる環境がなくなり悲しんでいた。そんな時に鏡の国に行くと、負けたチームだけが負け残りとして対戦し続け最下位を決める流れとなっている。アリスが野球チームに助っ人で入り、この世界の悪しき慣習を破壊しようとする。全国で一番弱い野球チームを決めるなんていう残酷なことをやるとんでもない世界だ。かなり強烈すぎる。

■ストーリー
春風に誘われたような気まぐれから、アリスは新聞記者の宇佐木さんのあとを追い、時計屋の鏡の中に入ってしまった。その日は夏休みの「全国中学野球大会最終戦」の前日。少年野球のエースだった彼女は、負け進んだチーム同士が戦う奇妙な大会で急遽投げることになる。美しい季節に刻まれた大切な記憶の物語。

■感想
鏡の世界の中は、現実とは違う世界になっていた。まず最初に目につくのは、鏡の世界なので文字が反転していることだ。そして野球がうまくて有名な選手は、サッカーに没頭していたり、文科系の人がスポーツをしていたりと人間にも変化がある。

アリスは鏡の世界での自分がどのような状態なのかわからない。野球好きなアリスが、鏡の世界で負け残りの野球大会に、最終戦で自分たちのチームのために戦おうとする。鏡の世界では、負け残りの中でさらし者のようにテレビ放送されたりもする。

野球の国のアリスというタイトルどおり、アリスは野球が好きでピッチャーとして活躍していた。現実世界では女であるアリスは野球で活躍できないが、最弱チームを決める野球大会では、女であるアリスがチームの助っ人として参加することは問題にならない。

全国中学野球大会で優勝したチームと最下位のチームが対戦する。まさに虐殺されるだけの戦いだが…。この試合に参加することになったアリスは、現実世界で野球の名手たちを集め戦おうとする。

全国一野球が強い中学と全国一野球が弱い中学が対決する。もはやさらし者でしかない。そんな状況でどうなっていくのか。単純に考えると、初回でひとつもアウトが取れないのではないか?と思ってしまう。そして弱い方は、無様な思いしか残らないだろう。

しかし、アリスが現実世界の野球の名手たちを連れて、鏡の世界に入り込み一致団結して戦おうとする。相手が油断していたというのもあるのだが、その結果として予想外に善戦してしまう。この流れが妙にすっきりとする。

鏡の中の世界が奇妙すぎて面白い。



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