2019.2.17 鮫島とつながる何か? 【撃つ薔薇 AD2023涼子】
撃つ薔薇新装版 AD2023涼子 長編ハードボイルド小説 (光文社文庫) [ 大沢在昌 ]
評価:3
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■ヒトコト感想
2023年の物語だが、特別近未来を感じさせる描写はない。ただ、ラストになると鮫島と関連していたとわかり、2023年という意味がわかる。新種の麻薬を流通させる謎の組織に潜入捜査することになった涼子が、組織の中でどのようにして信頼を得ていくのか。また、組織は将軍という絶対的な存在に対して秘密主義が貫かれており、限られた幹部のみが将軍の姿を見ることができる。
この特殊な組織に入り込んだ涼子が、刑事らしくない残酷さを見せながら組織の全容を明らかにしようとする。組織に存在する裏切り者を見つけ出すことを理由にし、成果をあげ将軍に会おうとする涼子。潜入捜査ということを忘れそうなほど、組織のために働くのだが…。この涼子のキャラクターが特殊な魅力を放っている。
■ストーリー
西暦2023年、東京。犯罪組織は多国籍化し、凶悪を極めていた。櫟涼子は、新種の麻薬を流通させる謎の組織の潜入捜査を開始した。積み荷の麻薬を狙うトラックジャックと内通するスパイを炙り出す。組織で涼子に与えられた任務は、「見えない敵」との戦いだった。裏切りと抗争が渦巻くなか、涼子の捜査は結実するのか!?極限の緊張が漲るハードボイルド長編。
■感想
犯罪組織が多国籍化した中で、一握りの組織がより凶悪化し利益をむさぼる状態となる。涼子はある組織に潜入し、組織を壊滅させるために動き出す。この組織が強烈だ。絶対的なトップとして将軍が君臨し、その配下には大佐や少佐と呼ばれる幹部たちがいる。
それぞれの部門ごとに幹部は決まっており、幹部だけが将軍と会うことができる。組織は、裏切り者によりトラックジャックが横行し、新種の麻薬を何者かに盗まれていた。それを防ぐために涼子が入り込み、大活躍をする。
涼子は、たとえ潜入捜査とはいえ、あっさりと敵対する者たちに銃弾を撃ち込んだりもする。最後の一線は超えないのだが、十分に犯罪者として成立するような行為をする。それは、組織の仲間に仲間と認めてもらうためには必要なことかもしれないのだが…。
涼子はトラックジャックに対して、仲間に適切な指示をとばし、新種の麻薬が盗まれるのを防ぐことに成功する。そして、そこから先は組織内の裏切り者が誰かをあぶりだそうとする。涼子のトラックジャックに対するテキパキとした指示は強烈だ。
ラストは疑われながらも、涼子は将軍に会うことに成功し、そこから先は組織の裏切り者をあぶりだそうとする。本作は単純な流れではない。絶対的な権力をもつと思われた将軍でさえ、実は操られていた。すべての黒幕は別に存在する。
麻薬の製造部門と、流通部門を分けることにより、警察に嗅ぎつかれた場合のしっぽ切りをしようとする。結局のところ、涼子よりも前に潜入していた捜査官はでてこない。それでも、涼子の正体が判明し、鮫島との関係が明らかになると、ファンはうれしくなってくる。
涼子と鮫島は、言われてみれば似ているのかもしれない。
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