当確師 十二歳の革命 


 2021.6.19      現職総理を落選させる当確師 【当確師 十二歳の革命】

                     
当確師 十二歳の革命 [ 真山仁 ]
評価:3.5
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■ヒトコト感想
「当確師」の続編にあたる本作。今回はいきなり現職の総理大臣を落選させるという依頼が聖に舞い込む。聖がサポートすると99%当選してきたという、結果がすべての当確師。誰かを当選させる力はあるが、現職の総理大臣を落選させることができるのか。国民には人気があるが政治的センスが皆無な総理。12歳の子供に痛いところを突かれそのことに悪態をつく。

総理の独断で諏訪の田舎に原子力エンジンの研究施設を作ろうとするなど、対総理側には追い風が吹いているのだが…。候補者がいない。総理のスキャンダルを活かせる有力候補者は90歳近い地元の盟主のみ。そんな状況で聖は巧みな選挙戦術を繰り返す。週刊誌の記者、新聞記者、総理の後援会の会長まで、様々な有象無象が動き出す。ラストの結果は驚きでしかない。

■ストーリー
日本最強の選挙コンサルタント・聖達磨―人呼んで「当確師」。人柄は最低、依頼料は高額、それでもこの男が動けば当選間違いなしの聖に、新たな依頼が舞い込んだ。強権的な岳見勇一総理大臣を、その座から引きずる下ろすため、選挙区で落とすというミッションだ。

一方、岳見総理は地元で、少年から「里山を壊さないでください」と問い詰められて話題となる。選挙区内にある湖に、NASAとの共同研究所を誘致する計画があるという。この少年こそ総理への刺客の適任者!だが、少年には、被選挙権がない。どうする、聖!?

■感想
金にうるさく選挙に勝つためにはなんでもやる当確師の聖。過去99%の確率で当選させつづけた男が、次にチャレンジするのは現職の総理大臣を落選させることだった。独断で何の相談もなく独自の動きをする総理は、地元民だけでなく実の息子や講演会の幹部にさえ疎まれている。

そんな総理が相手とはいえ、聖は有力な対抗馬を見つけ出すことができない。12歳の小学生から「里山を壊さないでください」と言われ、その場しのぎの言葉を紡ぐ総理。世間の大バッシングに合うのだが、それを気にしない胆力の強さがある。

総理の対抗馬としてなんとか見つけ出したのは地元の盟主である90歳近い老人だった。総理に噛みついた12歳の少年の祖父にあたる人物だ。義理の娘や、実の息子は過去に総理に痛い目にあわされた経験があり、政治の世界から離れている。

地元の新聞社や週刊誌の記者が総理のスキャンダル探しに躍起になる中で、選挙で総理の息子が総理と同じ選挙区で立候補するという話題がでてくる。このあたり、スキャンダルを手に入れるまでの週刊誌記者の執念のようなものを感じずにはいられない。

聖の策略と世間の流れから総理を倒せる見込みが立った時、候補者が急死する。90歳近い年齢が響いたのだろう。ある意味、想定通りの流れとなっているが、その後の代替候補者が驚きだ。さらには、ラストでは、聖がその候補者と会話をする。

すべてはその候補者が仕組んだこと、という流れだ。12歳の少年が総理に噛みついたのも。候補者がおらず老人に白羽の矢が立つことも。そして、志半ばで死ぬことも。。それまでは聖の中で候補者としてまったく上がらない人物が最後に強烈なインパクトを残している。

マスコミを含めた選挙戦の醍醐味がここにある。



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