当確師 真山仁


 2016.11.19      結果がすべての職業 【当確師】

                     

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■ヒトコト感想
敏腕選挙コンサルタントで当確師とよばれる男・聖。選挙コンサルタントというと、アメリカ大統領選挙を描いた「スーパー・チューズデー」を思い出す。本作では聖が政令指定都市の市長選挙で現職の市長を負かす候補を探すところから始まる。そもそもの依頼が、市長を引きずりおろしたいというだけ。代わりに誰が市長になろうと問題はない。

そんな状況であっても当確師は様々な策略を張り巡らせ、自分が押す候補者を当選させる。強力な現市長を負かすために必要な候補者がなかなか見つからず、見つけたとしても選挙に前向きだとは限らない。非常に困難な状況にも関わらず聖の策略により、選挙は思惑通りにすすむことになる。

■ストーリー
莫大な報酬と引き換えに、当選率99パーセントを約束する敏腕選挙コンサルタント、聖達磨がこのたび引き受けたのは、最近、大災害時に備えた首都機能補完都市に指定された政令指定都市・高天(たかあま)市長選挙で、現職市長を打倒するというミッション。

金、権力、検察、洗脳、服従、プロパガンダ。あらゆる手段を講じてのし上がり、今の地位を築いた現職の鏑木次郎の三選阻止のため、聖は、意外な人物を候補に擁立し、鉄板の市長の牙城に挑むが―。圧倒的な現職有利の中、身内をも分断し、裏切りに裏切りを重ねて壮絶化する高天市市長選挙。果たして次期市長に選ばれるのは?そして日本の民主主義の未来は―!?

■感想
選挙コンサルタントの仕事は、選挙が始まると選挙事務所には近づかない。莫大な報酬を受けるのも、あれこれデータを駆使して策略を練るのも候補者が立候補する前の話だ。本作では現職市長のあくどい部分がこれでもかと描かれている。

市民からは人気があり、様々な政策を実現していくが、独断的であり、強引な手法を用いる。本作を読みながらイメージしたのは、大阪市長の橋下だ。圧倒的な支持を受け当選したが、敵も多い。何かを改革するにはそんな人物が必要だが、敵につぶされる可能性もあるということなのだろう。

選挙コンサルタントの聖は巧みな票読みをし、どうすれば選挙に勝てるかを分析する。現実に本作のような選挙コンサルタントはいるのだろう。相手のスキャンダルを探しだしマスコミに流す。また、イベントでインパクトが大きくなるように出馬宣言をさせる。

組織票をどのようにして手にするのか。意外なのは、データとして事前に票読みしたことがほぼ的中するということだ。それだけ組織票というのは固いのだろう。そして、組織票が圧倒的に浮動票よりも大きいということに驚いた。

どの世代の有権者にアピールするかというのも語られている。投票率が高いのは高齢者だが、20代にアピールすることが必要だという。短期的には直接票にはつながらないが、支持者として継続する可能性が強いということだ。

また、信じていた候補者が不祥事を起こしたとしても、最初はそのことに目を背ける。候補者を信じた自分が悪いような気持ちになるからだ。選挙は金や謀略も必要だが、それよりも巧みな心理ゲームのような印象を受けた。取り乱した方が負けなのだろう。

選挙コンサルタントは結果がすべての職業だ。



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