冬芽の人 


 2018.4.4      すべては仕組まれた事故だった 【冬芽の人】

                     
冬芽の人 (新潮文庫) [ 大沢在昌 ]
評価:3
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■ヒトコト感想
元刑事の牧しずりが主人公の本作。同僚が捜査中の事故が元で死んだことを気に病み、刑事を辞め平凡なOLとして暮らしていた。そんなしずりの前に事故死した男の息子である岬人が現れたことで、事件を思い出すことに…。しずりが関わった事件の奇妙さは強烈だ。犯人が逃げる際にもみ合ったことで同僚である前田が頭に怪我を追い、その犯人は道路に飛び出しトラックにはねられ死亡する。

単純な事故であり被疑者死亡のまま終わった事件だが、裏に大きな秘密があった。まず、トラックの事故が意図したものだったということが衝撃だ。いくら予め示し合わせたとしても、意図的にトラックで相手を轢かすというのは相当なタイミング的な難しさがあるような気がした。

■ストーリー
警視庁捜査一課に所属していた牧しずりは、同僚が捜査中重大事故に遭ったことに責任を感じ、五年前に職を辞した。以来、心を鎖して生きてきた。だが、仲本岬人との邂逅から、運命の歯車は再び回り始める。苛烈な真実。身に迫る魔手。古巣たる警察の支援は得られず、その手にはもはや拳銃もない。元刑事は愛する男のために孤独な闘いに挑む。警察小説の名手が描く、至上のミステリ。

■感想
しずりが過去の事件の真相を知ってからが物語の本番だが、まずこの過去の事件が曲者だ。どこまでが仕組まれた事件なのかわからない。あらかじめ容疑者を事故死させるために仕組まれた茶番なのだろうか。あわよくば、しずりの拳銃の腕を見込んで、しずりに射殺させていた可能性すらある。

死んだ前田の息子である岬人と共に、まずは事故を起こしたトラックの運転手を調査する。すると、トラックの運転手は死亡してしまう。この強烈な、裏に何かある感はすさまじい。すべてを牛耳る巨大な黒幕を想像せずにはいられない。

調査すればするほど、怪しげな材料がでてくる。そして、結論としては関係者たちの出身地が同じということになる。となると、事故が元で死亡した前田も何かしら加担していたという、岬人にとっては知りたくない結末となる。ここでしずりと岬人のちょっとした恋愛風味も登場してくる。

かなり年上のしずりに対してグイグイとアピールしてくる岬人。しずりも岬人に興味をもってはいるが、心の中では自制しているしずり。この微妙な関係と、様々な人物が裏でうごめく展開が良いのだろう。

ラストは全ての黒幕の存在が明かされる。そして、しずりは対決することに。ひとりの黒幕が、裏で指示しただけですべてを実行してしまう。この黒幕のなんだかわからない強烈なカリスマ性というのを感じずにはいられない。

元刑事のしずりが、様々な人物から言い寄られたりもする。刑事を辞めたしずりが、刑事以上に終わった事件に首を突っ込むことになる。恐らくは、刑事を辞めたからこそ、なんのしがらみもなく思うがまま行動できるのだろう。

全ては仕組まれた事件という流れは、非常に興味をそそられる流れだ。



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