沈黙のパレード 


 2019.7.3      ラストで湯川だけが知る新たな容疑が浮かび上がる 【沈黙のパレード】

                     
沈黙のパレード [ 東野 圭吾 ]
評価:3.5
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■ヒトコト感想
ガリレオシリーズの長編集。疑わし容疑者を司法では裁ききれず、怒りを爆発させた関係者たちが協力してミステリアスな事件を演出する。今回も湯川が謎を解き明かすのだが、2段階の謎解きがある。メインの事件は証拠不十分として釈放された容疑者を、どのようにして殺害したかの謎解きと、その原因となった歌手死亡の女性の死についての謎解きだ。

恐らく読者は1発目の謎解きですべてが終わったと思ったことだろう。そこから二つ目の真実の解明があり、さらにはその先もある。ミステリーとしての驚きというよりも、その仕組みと関係者たちそれぞれがしっかりとキャラ付けされているため、感情移入してしまうという部分だ。シリーズでは久々の長編だがその面白さに変わりはない。

■ストーリー
突然行方不明になった町の人気娘が、数年後に遺体となって発見された。容疑者は、かつて草薙が担当した少女殺害事件で無罪となった男。だが今回も証拠不十分で釈放されてしまう。さらにその男が堂々と遺族たちの前に現れたことで、町全体を憎悪と義憤の空気が覆う。秋祭りのパレード当日、復讐劇はいかにして遂げられたのか。殺害方法は?アリバイトリックは?超難問に突き当たった草薙は、アメリカ帰りの湯川に助けを求める。

■感想
湯川が大活躍するガリレオシリーズの長編。証拠不十分で釈放された容疑者が何者かに殺された。物語として、過去にも少女誘拐殺人事件の容疑者として逮捕されたが証拠不十分で釈放された男が前半に語られている。

流れとしては、この男がどちらの事件も犯人と思われていたが、実は別の犯人がいたというのを湯川が探る物語かと思った。それが、容疑者が早々と殺害され、誰が復讐を実行したのかということが謎となっている。ミステリーではなくサスペンスだ。ある程度殺害事件のオチは想定できるのだが、そのトリックと事件の真相が肝だ。

湯川が常連となった食堂なみきや。そこの面々や常連が事件に関係している。ミステリアスな雰囲気は少ない。ただ、湯川がどのようにして事件を分析し、真相にまでたどり着くかがポイントかもしれない。さらには事件の裏には別の真相も隠されていた。

今回は複数の人物が事件にかかわるので、それら人物が犯人に対して強い恨みをもっていることが表現されている。強烈なインパクトはないのだが、それぞれが何をやっているのかわからないが、結果として容疑者殺害に繋がるパターンだ。

容疑者が殺害された事件については、そのトリックから関係者の証言までスムーズに物語はすすんでいく。それが、結末間近となり、新たな謎が登場してくる。町の人気娘殺害はそもそも別の人物が殺害したのでは?という疑惑を湯川が生み出してしまう。

この二転三転する流れというのは、読み進める手を止めることができない。最後まで事件の真相はクルクルと変わる。そして、勧善懲悪ではないパターンだ。事件の真相が明らかになったとしても、すっきりとした感覚は少ない。

長編シリーズとして二転三転する流れはすばらしい。



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