探偵さえいなければ 


 2019.5.23      そっくりさんのアリバイが最高に面白い 【探偵さえいなければ】

                     
探偵さえいなければ [ 東川篤哉 ]
評価:2.5
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■ヒトコト感想
烏賊川市シリーズ。日常にあるちょっとしたイベントから奇妙な事件が巻き起こる。今回も私立探偵の鵜飼などが活躍するユーモアミステリーとなっている。事件の根本にはシリアスな要素はない。おしゃれなカフェを作りたいから出資者を殺害するという動機ではあるが、なぜかそこまで深刻ではなかったりする。

ゆるキャラの中にいる人が死んでいたりと、あえてゆるキャラとしての個性を活かしたりもする。そしてAIを駆使したロボットをトリックとしたミステリーなど、それを使ってしまえばなんでもありなのでは?と思うようなパターンもある。極めつけは、よく似た男を使ったアリバイトリックなのだが、これも最後にずっこけるようなオチがある。

■ストーリー
関東随一の犯罪都市と噂される「烏賊の都・烏賊川市」では、連日、奇妙な事件が巻き起こります。時には、私立探偵・鵜飼杜夫が駆けつけられないことも。でも大丈夫。この街では事件もたくさん起こるけど、探偵もたくさんいるのです。ひょっとしたら、探偵がいなければ事件も起こらないのかも…。日本推理作家協会賞にノミネートされた佳編「ゆるキャラはなぜ殺される」など、安定感抜群のユーモアミステリ5編を収録した傑作集!

■感想
「倉持和哉の二つのアリバイ」は、倉持がアリバイトリックを行いたいがために、探偵の鵜飼を現場に居合わせることでアリバイを証明してもらおうとする。倉持は資産家から出資を受けていたがトラブルのため資産家を殺害しようとする。そこでのアリバイを作り上げるために鵜飼をたくみに利用したはずなのだが…。

アリバイ工作が想定とは別の流れとなる。それは、資産家という前振りがあるだけに意外な部分で引っかかったということなのだろう。オチがある程度笑える流れとなっている。

「ゆるキャラはなぜ殺される」は、ゆるキャラの中に入っている人がテントの中で胸に針を刺されて死んでいた。ハリセンボンのゆるキャラのぬいぐるみを着ていた男が、何者かに刺殺されていた。ヘンテコなゆるキャラを多数登場させ、ゆるキャラの中の人が死んでいたという特殊なミステリーだ。

ゆるキャラがハリセンボンということと、中の人が刺殺されていたというのがポイントなのだろう。ゆるキャラの中身が外身のゆるキャラと大きくイメージが異なるというのも面白ポイントだ。

「被害者によく似た男」は、強烈なインパクトがある。ターゲットに見た目がそっくりな男が、ターゲットを殺害する手助けをする。ある酒場でターゲットとして酒を飲むことで、加害者のアリバイを証明することができる。

見た目はそっくりだが、髪の毛が薄いことが唯一の違いだったので…。この微妙な違いがのちに大きな影響を及ぼすことになる。そっくりさんでのアリバイトリックはわりと普通だが、それが崩れるきっかけが最高に面白い。かなりコメディ要素が強い短編だ。

このシリーズは毎回強烈に面白い短編がひとつはある。



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