はやく名探偵になりたい 


 2014.10.28      お笑いキャラ一直線 【はやく名探偵になりたい】  HOME

                     

評価:3

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■ヒトコト感想

鵜飼探偵シリーズの短編集。最初のころと比べるとこのシリーズはキャラ頼りに激しく偏ってきている。特に鵜飼探偵は、お笑いキャラ度合がすさまじい。トラックにはねられて飛ばされたり、階段を転げ落ちたり。シリアス路線ではありえないアニメ的な映像をイメージさせるような流れだ。鵜飼の部下である流平も同じくお笑い路線を突っ走っている。

ミステリー的なトリックは大したことはない。鵜飼の空気の読めない行動で、名探偵風を装いつつ、変な行動をくりかえす。お笑いキャラで、事件を引っ掻き回すが、最後にはなぜか鵜飼が解決してしまう。正直、説得力はない。鵜飼のキャラの面白さと、それに引っ張られる形の周りのキャラの面白さを楽しむべき作品だろう。

■ストーリー

人をイラつかせる無神経な言動と、いいかげんに展開する華麗な(?)推理。鵜飼杜夫は、烏賊川市でも知る人ぞ知る自称「街いちばんの探偵」だ。身体だけは丈夫な助手の戸村流平とともに、奇妙奇天烈な事件解決へと、愛車ルノーを走らせる。ふんだんに詰め込まれたギャグと、あっと驚く謎解きの数々。読めば読むほどクセになる「烏賊川市シリーズ」初の短編集。

■感想
「時速四十キロの密室」は、走行中のトラックの荷台に乗せられた男が、いつの間にか何者かに喉をパックリと切られ殺されていた…。珍しく探偵らしい仕事として浮気調査を行う流平の目の前で起こる事件。流平が監視する中での事件なだけに、その不可能具合は他の短編よりもすぐれている。

荷台に乗せる直前までは生きていたのになぜ?トリックとしてはかなり強引というか、偶然の要素に頼りすぎている。種明かしをされると、がっかりするパターンだ。この短編は他の短編よりも鵜飼と流平のキャラ立ちが心なしか弱い。

「七つのビールケースの問題」は、深夜に起きた奇妙な事件の謎を解く物語だ。この短編における鵜飼と流平のお笑いキャラっぷりはすさまじい。コントのように、軽トラにはねられ飛ばされてしまう、なんて描写が通用するのは本シリーズだけだろう。

ドラマ化され、映像化されたのだが、そこでも原作に忠実に鵜飼はふっ飛ばされていた。事件のトリックは割と複雑で、オチは納得できのだが、キャラの特殊さばかりが強く印象に残っている。鵜飼たちだけでは突っ込み役が不足している。それを考えると前作まで登場していた二宮の重要性がわかる。

「雀の森の異常な夜」は、車いすに乗った老人が何者かに海に突き落とされる事件を目撃した流平の物語だ。オーソドックスにお屋敷の関係者をリビングに集め、鵜飼が推理する。探偵小説の定番すぎる流れの中で、鵜飼の特殊さが表現されている。

車いすに乗る老人を何者かが崖に連れて行き、帰りは車いすに誰も乗せずに帰ってきた。ある程度トリックは想定できる。が、その動機についておせっかいな人物が気を利かせてやったこと、というオチとなる。最初の印象では、すべて計算ずくでの完全犯罪かと思っていたが、そこまで無慈悲な物語ではないということなのだろう。

このシリーズのキャラは、お笑い路線へ一直線だ。



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