そこに僕はいた 


 2018.12.11      少年時代独特の心境 【そこに僕はいた】

                     
そこに僕はいた改版 (新潮文庫) [ 辻仁成 ]
評価:3.5
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■ヒトコト感想
辻仁成の少年時代から青春時代の思い出がエッセイとして語られている。印象的なエピソードのみを語っているのだろうが、非常に興味深い。時代は違うが少年時代の描写など妙ななつかしさを感じてしまった。さらには、少年時代独特の心境や女子に対して、気持ちとは相反する態度をとるなど、まさに少年独特の現象が語られている。

青春時代のエッセイについても、柔道部であったことやドロップアウトしそうになったこと、そしてバンド時代まで、まさに青春物語そのものだ。少年時代のエピソードなどは重松清が描きそうな内容そのままだ。今の作者はフランスに住むなど特殊な状況に思えるが、子供時代はごく普通の少年だったというのがよくわかる作品だ。

■ストーリー
大人になった今、毎日楽しみにしていた学校はもうない。でも友達たちは、僕が死ぬまで大切に抱えていける宝物なのだ―。少年時代を過ごした土地で出会った初恋の人、喧嘩友達、読書ライバル、硬派の先輩、怖い教師、バンドのマドンナ…。僕の人生において大いなる大地となった、もう戻ってはこないあの頃。永遠に輝きつづける懐かしい思い出を笑いと涙でつづった青春エッセイ。

■感想
親の仕事の関係で頻繁に転校していた少年時代。行く先々で個性的な友達とのエピソードが語られている。方言まるだしだが、喧嘩をしたり仲良くテレビや漫画の話をしたり、時には気になる女子の話まで。まさに小学生時代でのあるあるに満ちている。

喧嘩もし家が貧乏だとか金持ちだとか、その時にはそこまで気になることではないが、小学生時代の貧富の差を無視したコミュニティができるのは、小学生時代独特の流れかもしれない。喧嘩をしても実は仲が良いというのはまさに小学生独特だ。

高校生になりグレかける描写もある。悪仲間のたまり場になっている部屋に入り浸るなど定番的な流れだ。ただ、そこから正常な道に作者は戻っているのだが、最後までドロップアウトし続けた知り合いについても語られている。

作者のエッセイの特徴としては、テレビ番組の企画や、自分が思い立ったからか、過去の友達に対して連絡をとったりもしている。まったく覚えていないと答える友達もいれば、幸せな家庭を築いている友達もいる。悪の友達は、ヤクザになりその後消息不明となっている。

バンドを組むエッセイもある。バンド内で御法度だった恋愛もひそかな恋心としてとどめてはいたが、その女性が駆け落ちするという衝撃的なオチもある。金持ちのドラマーを仲間に引き入れることや、成長した仲間たちがどのような生活をしているかまで。

青春時代の思い出を語り、その後現在の状況を語る。自分がどれだけ共有できるかによって楽しみ方が変わるだろう。時代は違えど小学生の考えることはあまり変わらないのだろう。自分はバンド活動とは無縁だったが、青春時代独特の浮かれた雰囲気は共有できた。

作者のイメージが、自分の中ではかなり変わった作品だ。



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