下町ロケット4 ヤタガラス 


 2019.6.15      佃製作所がピンチにならないと盛り上がらない? 【下町ロケット4 ヤタガラス】

                     
下町ロケット ヤタガラス [ 池井戸 潤 ]
評価:3
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■ヒトコト感想
下町ロケットシリーズ。前作でロケットエンジンからトランスミッションにチャレンジした佃製作所。すでにドラマで見ているので内容は知っていた。原作とドラマでは若干の違いがあるにせよ、安定した面白さがあるのは間違いない。帝国重工に切られた下請け会社の企業たちが一致団結して巨大企業に立ち向かう。今までの作者の作品であれば、判官びいきとなるはずなのだが…。

今回は佃製作所が、帝国重工側につくのでその図式が逆になっている。弱小下請け企業側が優勢なため、巨大な帝国重工側がピンチに立たされる。弱小側の大逆転というのがないので、いつもの爽快感はない。下請け側に佃製作所が加わっていれば、また違った雰囲気になるのは間違いない。

■ストーリー
社長・佃航平の閃きにより、トランスミッションの開発に乗り出した佃製作所。果たしてその挑戦はうまくいくのか――。ベンチャー企業「ギアゴースト」や、ライバル企業「ダイダロス」との“戦い"の行方は――。帝国重工の財前道生が立ち上げた新たなプロジェクトとは一体――。そして、実家の危機に直面した番頭・殿村直弘のその後は――。大きな挫折を経験した者たちの熱き思いとプライドが大激突! 準天頂衛星「ヤタガラス」が導く、壮大な物語の結末や如何に! ?

■感想
ドラマを見たので、内容についてのワクワク感はない。トランスミッション開発における問題や、農業の未来を考えた新しい耕運機などがメインとなっている。佃製作所は今までのシリーズと比べ、特別な苦労はない。いつもならば、佃製作所が存続の危機に直面し、それを一発逆転のアイデアでひっくり返す。

最後に悪の大企業である帝国重工に大きなしっぺ返しを繰り出す。このパターンではない。ピンチに陥るのは佃製作所ではなく、帝国重工となっているのが意外な流れだ。

新規事業を起こすにあたっての政治的な駆け引きが描かれている。それは当然佃製作所ではなく、帝国重工内部の話だ。今回は、佃製作所はあまりメインではない。

下請け企業連合では、ギアゴースト内部での問題が浮き彫りになる。そして、帝国重工に対して恨みを晴らすべく、様々な者たちが暗躍している。いつものように帝国重工が巨大企業の力で対抗しようとするが、今回ばかりはすべてが裏目にでてしまう。結局のところ最終的な勝ち負けはあるにせよ、下請け企業側はかなり善戦したということだ。

佃製作所がピンチに陥らないと、その後の勝利に対してもあまり爽快感がわいてこない。元佃製作所の殿村のエピソードだけはかろうじて、ピンチから一発逆転へとつなげている。やはり、ピンチがないと盛り上がりに欠ける印象になる。

佃製作所に新たに島津という天才エンジニアが参加したことで、逆に今後の展開が難しくなったような印象を受けた。本作がシリーズ化され続くためには、新たな分野へ進出するしかないのだろう。

ドラマを見ているので、安心して読むことができた。



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