下町ロケット3 ゴースト 


 2019.6.6      ギアゴーストは初期の佃製作所だ 【下町ロケット3 ゴースト】

                     
下町ロケット ゴースト[ 池井戸潤 ]
評価:3.5
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■ヒトコト感想
下町ロケットシリーズの第3弾。今回は佃製作所がトランスミッションに挑戦するという物語だ。ただ、本作を読む前に、テレビドラマを先に見てしまったので、内容はだいたいわかっていた。そんな状態で本作を読んだのだが…。登場人物はドラマの俳優たちを頭に思い浮かべながら読むことができた。ドラマでは描かれなかった、技術者としてのこだわりある部分は読みごたえがあった。

そして、このシリーズの一番の売りでもある、究極に追い込まれた状態からの大逆転というのも、今回はしっかり登場してくる。法的な問題なのか、わかりやすさの問題なのか、ドラマは若干違った展開になる部分もあるが、相変わらず特許で争うのがこのシリーズは大好きだ。

■ストーリー
宇宙から人体へ。次なる舞台は大地。佃製作所の新たな戦いの幕が上がる。倒産の危機や幾多の困難を、社長の佃航平や社員たちの、熱き思いと諦めない姿勢で切り抜けてきた大田区の町工場「佃製作所」。高い技術に支えられ経営は安定していたかに思えたが、主力であるロケットエンジン用バルブシステムの納入先である帝国重工の業績悪化、大口取引先からの非情な通告、そして、番頭・殿村の父が倒れ、一気に危機に直面する。

ある日、父の代わりに栃木で農作業する殿村のもとを訪れた佃。その光景を眺めているうちに、佃はひとつの秘策を見出だす。それは、意外な部品の開発だった。ノウハウを求めて伝手を探すうち、佃はベンチャー企業にたどり着く。彼らは佃にとって敵か味方か。大きな挫折を味わってもなお、前に進もうとする者たちの不屈の闘志とプライドが胸を打つ!大人気シリーズ第三弾!!

■感想
このシリーズはロケットのエンジンから医療機器など幅広い分野を描いている。今回、佃製作所はトランスミッションにチャレンジしようとしている。未経験の分野に挑戦するのも、本シリーズの強みなのだろう。四苦八苦しながら最後には成功する。

ドラマを先に見ていただけに、展開はだいたい予想つくのだが、それでも強烈なインパクトがあるのは間違いない。特に技術者としてのプライドというか、軽部というキャラクターがドラマ版とは違い、かなり好感のもてるキャラだったのだなぁと感じた。

帝国重工の下請け問題や新たな社長候補の登場など、佃製作所には強烈な逆風が吹いている。それでも、ギアゴーストという会社と協力しながら良いものを作ろうとする。今回は、佃製作所が直接経営難に陥るようなピンチではない。

ギアゴーストを助けるために佃製作所が奔走するという形だ。お決まり通り、特許問題で例の弁護士が莫大なライセンス料を請求してくる。特許の争いは、いつものパターンで絶体絶命な状態から起死回生のアイデアがわきだしてくる。

本作は次回作へ向けての助走の意味合いもあるのだろう。佃製作所が助けたギアゴーストは裏切りをはたらこうとする。その根本にあるのは、帝国重工への恨みということになる。この流れは最高だ。

佃製作所自身にピンチがおとずれることはないのだが、ギアゴーストを交え、帝国重工に切られてきた下請けの恨みがすべて次回作につながっている。ギアゴーストがまるで初期のころの佃製作所のように思えてくる。ドラマ版の配役で登場人物たちをイメージしつつ、楽しく読み進めることができた。

このシリーズは気づいたら読み終わっているほどの勢いがある。



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