シンドローム 下 


 2019.5.15      現実に起こっていたであろう政府との駆け引き 【シンドローム 下】

                     
シンドローム(下) [ 真山 仁 ]
評価:3.5
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■ヒトコト感想
上巻では、東日本大震災発生時での電力会社内部のゴタゴタが描かれていた。それを受ける形で、原発事故を起こした電力会社をどのようにして救うのか国かそれとも鷲頭か、はたまた潰すのか。現実にも議論されたであろうことが本作でも語られている。莫大な負債を抱える予定の電力会社に対して、誰が手を差し伸べるのか。国有化しかないのか、それとも…。

外資に電力会社を買わせまいとする勢力と鷲頭の激しい駆け引きが始まる。全てを牛耳る電力会社の会長が暗躍し、鍵を握る政治家たちとの裏取引をする。鷲頭も負けずにタフネゴシエーターとしての本領をはっきする。まさに、現実の東電でも外資が触手を伸ばしていたら、どうなっていたのだろうか、と思わせられる作品だ。

■ストーリー
官邸は迷走、首都電は責任回避に奔走。原発メルトダウンの危機は確実に進行する。表向き救世主として振る舞う鷲津の本当の狙いは?権力者たちの疑心暗鬼は膨れ上がる。無論、生半可な救済など許さない。絶対不可能のはずの「国策企業」の買収を、現実に起こりうるものとして描くドラマ、驚愕の結末!

■感想
破綻に向かう首都電力はどのようにして復活するのか。首都電力に触手を伸ばした鷲頭に対して様々な妨害が入る。首都電力会長が各所に手をまわし、政府に電力会社を救わせようとする。原発事故により莫大な負債を抱えた電力会社が、今までどおりに生きるすべはない。

国有化かつぶれるかしかない。そんな状態でも会長は首都電力の存続を考える。鷲頭が狙うのは、首都電力のうま味だけだ。負債や事故の収束対応は別会社とし、そこは政府に補償させ、電力会社としてうま味のある部分だけを手に入れようとする。まさに外資の考え方だ。

鷲頭に対抗するのは首都電力会長の濱尾や有力政治家たちだ。それら魔物のような者たちと鷲頭は対等以上に渡り合う。その過程で、原発メルトダウンが発生した原因は政府にあると断言する。それらの証拠を集め、政治家につきつける鷲頭。現実の世界でも、同じようなことが起きていたのだろうか。

福島第一の原発事故は政府に原因があったのだろうか。実際に起こったことをベースに描かれている作品なだけに、真実はどうなのかと思わずにはいられない。まさに、あの事故の時、鷲頭がいたらどうなっていたのか?と考えずにはいられない。

鷲頭が暴れまわると、妨害側は最後の手段にでてくる。それは国家権力を使う方法だ。証券取引法違反で鷲頭を逮捕するという情報が流れる。まさに、本作を読んでいく中で、政府に喧嘩を売っている鷲頭は、いつかホリエモンと同じように国策捜査により逮捕されるのでは?と考えながら読んでいた。

まさにその流れとなり、日本の政治の暗部を見たような気分となった。電力会社を手に入れるなんてことを考える鷲頭もすさまじいが、そのチャンスが、原発事故によっておとずれ、それを逃さない胆力がすさまじい。

まさに原発事故当時の東電をどうするかの内幕のような感じだ。



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