雪月花 謎解き私小説 


 2021.11.18      マニアックな知識がないと付き合えない 【雪月花 謎解き私小説】

                     
雪月花 謎解き私小説 [ 北村薫 ]
評価:2.5
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■ヒトコト感想
作者の文学的な知識にどこまでついていけるのか。日常の生活の中で、江戸川乱歩や芥川龍之介や三島由紀夫との関連を語る。このあたりの知識がないとついていくのは辛い。作中で登場してくる人物たちは皆、文豪についての深い知識があり、作者と同等に話ができている。逆に作者に対してクイズのようなものを出したりもする。

作者の古典好きが爆発している。興味深いのは講演会へ行く際のエピソードだ。聞いたことのないオノマトペをどのように読むのか。先入観がないと人はどのようにして擬音を読むのか。先に読んだ人に多少なりとも影響を受けるのが面白い。また、岡山での講演会では、巨大な古書店でのワクワクするような雰囲気が伝わってきた。

■ストーリー
本と本とが響き合い奏でる音を愛でる日々。読書愛あふれる初の私小説。解決のない疑問は、解毒剤のない毒薬のようなものだ――どうして! なぜ? と謎は深まる。江戸川乱歩、三島由紀夫、芥川龍之介、山田風太郎、福永武彦……小説、俳句、詩歌に音楽、小沢昭一の随筆も登場。本を読んではスパークする作家魂。読み手もまた創作者、本読む愉しみを分かち合い、時空をめぐる、日常の冒険。

■感想
本好きの作者が語る日常。編集者とのちょっとした会話の中で、常に古典の話題が登場してくる。作者に対応する編集者にしても、そこらへんの知識があることが前提となっている。幼いころに読んだルパン全集の話なども、同等の会話ができるということが編集者としては必要なのだろう。

世間の本好きであっても、かなりマニアックな知識がなければ同等に会話ができないと思うのだが…。作者の周辺には、やはり古典好きが集まるのだろう。自分の読書歴からすると、まともに会話の相手ができないだろうと思った。

印象的なのは、作者が講演会の場で学生に読んだことのないオノマトペを読ませる下りだ。ワンワンなどのなじみのあるオノマトペであれば違和感なく読めるが、もし犬の鳴き声として特殊な文字が並んでいたとしたら…。人はどのようなイントネーションで読むのか。

これはまさに読み手の想像力によって大きく変わっていくだろう。結局は、最初に読んだ人に引っ張られる傾向にあるらしい。確かに、自分が今まで口にだしたことのない擬音というのはどのように読むのかは難しいところだ。

作者が岡山へ講演会に行った際の、超巨大な古書店での話は強烈だ。普通の書店ではなく、古書店というのがポイントなのだろう。古書好きの人にとっては初版ということにも価値があるようだ。今は絶版となった掘り出し物がみつかったり…。

ここでも編集者と共に巨大古書店をめぐるのだが、ここで適切な会話ができるのは古書に対する知識があるからだろう。江戸川乱歩は読んだことがあるのだが、作品のタイトルや内容まで細かくは覚えていない。このあたりの細かな話を楽しめるのかどうか…。

古書好きであれば楽しめるだろう。



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