セル 下 


 2022.2.6      スマホ依存の現在に警笛を与える 【セル 下】

                     
セル 下/ スティーヴン・キング
評価:3
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■ヒトコト感想
映画版「セル」とは若干異なる流れとなる。携帯人のボス的存在がクレイの頭の中にメッセージを送ってくる。携帯人と正常人の対決という図式はあるのだが、実は地球規模で考えると携帯人の方が地球にやさしい生活をしているのかもしれない。電波で制御された携帯人は規則正しい生活をする.バグったりしなければ、携帯人は問題ない存在だ。

クレイは行方不明の息子を探すために旅を続けるのだが、その道中でアリスが脱落したりもする。やはり映画版でもメインであったラストの展開はすさまじい。眠っている携帯人たちをバスに乗せた爆弾で吹き飛ばす。お互いがトラブルなく過ごせば携帯人と正常人は実は和解できたのでは?と思わずにはいられない。

■ストーリー
口ひげの小男トム、十五歳の少女アリスが仲間に加わった。クレイは彼らとともに最愛の息子の無事を祈りながら「我が家」のあるメイン州を目指す。だがその一方で携帯狂人は群れを形成するようになり、振る舞いも進化していく。そして、リーダーらしき人物の登場…。絶望的なまでに人無き荒野をゆく三人の旅のゆくえと、彼らを襲う悲劇とは。人類の未来をも問う、心揺さぶる結末。

■感想
クレイとトムとアリスの旅は上巻から続いている。下巻ではそのメンバーに加わる者もあり、離脱する者もある。不幸な事故でアリスが早々と離脱してしまう。携帯人のボスから謎のメッセージが頭の中に送られるクレイ。

携帯人の目的が何であるかはわからないまま、携帯人のボスに指示され携帯の電波が届かない場所へと向かおうとする。電波で人間の体にノイズを送り、頭の中を書き換え正常人から携帯人へと変化させてしまう。まるで工場のように正常人に携帯を近づけるだけで携帯人になってしまうのは恐ろしい。

クレイたちは携帯の電波が届かない場所へ向かおうとする。作者は携帯電話に支配されたような現代人の生活を揶揄して本作を描いたのだろう。携帯がなければ、人は平和に生活できる。携帯の電波が届かなければ平和に暮らせる。

電波にのって届けられるプログラムにバグがあると、携帯人たちは奇妙な動きをする。人間の脳みそにプログラムが埋め込まれるのは恐ろしい。そして、再起動が必要というのも携帯そのままだ。ラストではクレイたちは携帯人たちを大量の爆弾で一網打尽にしようとする。

ラストで、クレイは考察している。実は携帯人こそが地球にやさしい生物ではないかと。正常人と携帯人たちの対立というのも、ちょっと正常人たちの勇み足のような気がした。携帯の電波が届かない場所で正常人たちが生活し続ければ、携帯人と正常人はうまい具合に棲み分けができたのかもしれない。

クレイは行方不明の息子を探すために旅を続けていたのだが…。携帯人となった息子と正常人が生活する未来というのはどうなるのだろうか。続きが気になる流れではある。

携帯依存の現代に警笛を与えるような作品だ。



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