2019.3.19 虚構を超える現実が登場してしまった不幸 【三月のライオン 後編】
三月のライオン
評価:3
■ヒトコト感想
前編は零の精神的な不安定さが、これでもかと描かれていた。後編では零の周辺で様々な問題が起こる。零と義理の姉との関係は修復されつつあるが、川本家に問題が発生する。実は次女がいじめに合っていた。零は何かできることがないかと考える。さらには川本家を出て行った父親が戻ってきたりもする。
零の将棋関連のエピソードはほとんどない。もはや天才棋士としての成長を見守るだけの段階となっている。そのため、周りの棋士たちのざわつきを横目に、獅子王戦のトーナメントで後藤と対決しその後に控える最強の相手との対決をするまでが描かれている。現実に藤井聡太が存在しているだけに零の特殊さがそこまで際立っていないのが、将棋だけではそこまでインパクトがあるように感じられない要因だろう。
■ストーリー
若き天才ともてはやされる17歳の将棋のプロ棋士・桐山零。 しかし彼には、家も家族も居場所も─何もなかった中学生でプロ棋士としてデビューした桐山零は、東京の下町に一人で暮らしている。幼い頃に交通事故で家族を失い、父の友人である棋士の幸田に引き取られたが、自分のせいで幸田家に亀裂が入り、家を出るしかなかったからだ。
深い孤独を抱えてすがりつくように将棋を指し続けていたある日、零は近隣の町に住む川本家の3姉妹と出会い、彼女たちとのにぎやかな食卓に居場所を見出していく。温かな支えを胸に、闘いへと飛び込む零。若手NO.1を決める新人戦、最高峰を決める師子王戦― それは、様々な人生を背負った棋士たちが、頭脳と肉体と精神のすべてを賭ける壮絶な闘いだった。
ところが、ある事件が川本家を襲い、さらに3姉妹を捨てた父親が現れ、耳を疑う要求を突き付ける。一方、幸田家も子供たちが父に激しく反発し、崩壊へと向かっていく。大切な人たちを守るため、強くなるしかない― 新たな決意のもと獅子王戦トーナメントに挑む零。トップには、将棋の神の子と恐れられる宗谷名人が待ち受けていた─。
■感想
若き天才のプロ棋士零。後編ではその周辺、特に懇意にしていた川本家のごたごたが中心に描かれている。前編では精神的に不安定な零を全面的にサポートし支えとなっていた川本家の面々。それが、今度は零が川本家を助ける番となる。川本家の次女のひなたがイジメにあう。それをどうにかしようと考える零。
赤の他人をいじめから救い出すのは難しい。経済的な援助すら考えるのだが…。このあたり、零の精神状態は安定しているが、世間的にはまだ子供だという印象が強い。
ひなたのいじめ問題が解決した後には、女を作って家を出て行った川本家の父親がふらりと戻ってくる。そこでひなたたちに一緒に暮らそうと言い始める。身勝手な父親に対して反発する零なのだが…。本当の家族である川本家の三姉妹たちは、それぞれの思いがあった…。
零の将棋以外のごたごたがメインで描かれている後編。それらが解決すると、晴れて零が獅子王戦の決勝で後藤と対決する。その描写的には悩み苦しむ零なのだが、その後には、しっかりと勝ち上がる。このあたり将棋についての説明は少ない。
最終的には宗谷との対決に至るまでの流れが描かれて終わる。とうとうタイトル戦に挑戦するまでに成長した零。漫画的には現実ではありえないことを、天才棋士として零を描くことで実現させる面白さがあったはずだ。
それが、現実には零以上に天才なプロ棋士である藤井聡太が登場してきてしまったために、漫画の非現実感が薄まっている。藤井聡太が零以上の活躍をしているため、零が普通に思えてしまう。これは、漫画であっても今の藤井聡太の活躍を描くと、嘘くさいため、編集者にボツを食らうほどの状況なのだろう。
虚構を超える現実が登場してしまったのが不幸だ。
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