2019.3.6 将棋ブームを先取りした作品 【三月のライオン 前編】
三月のライオン
評価:3
■ヒトコト感想
原作は漫画らしいが未読。将棋についてはルールを知る程度だが、昨今の将棋ブームで奨励会の厳しさはわかっているつもりだ。本作でも基本は天才棋士である零が、義理の父である幸田との関係や幸田の実の娘であり同じ幸田の弟子である義姉との関係などが描かれている。
中学生でプロ棋士としてデビューした零だけに、その実力はずば抜けている。ただ、精神的な問題がある。学校に通いながらのプロ棋士としての生活の難しさや、最高峰を決めるトーナメントなど、プロ棋士としての厳しさが描かれている。プロ棋士は自分の実力がすべて。そのため、強い者が偉く、弱い者は淘汰されていく。その反面、とてつもない孤独感があるのだろう。近隣に住む川本家の3姉妹と家族ぐるみで付き合えたのは、将棋とかけ離れた生活ができるからだろう。
■ストーリー
中学生でプロ棋士としてデビューした桐山零は、東京の下町に一人で暮らしている。幼い頃に交通事故で家族を失い、父の友人である棋士の幸田に引き取られたが、自分のせいで幸田家に亀裂が入り、家を出るしかなかったからだ。深い孤独を抱えてすがりつくように将棋を指し続けていたある日、零は近隣の町に住む川本家の3姉妹と出会い、彼女たちとのにぎやかな食卓に居場所を見出していく。
温かな支えを胸に、闘いへと飛び込む零。若手NO.1を決める新人戦、最高峰を決める師子王戦― それは、様々な人生を背負った棋士たちが、頭脳と肉体と精神のすべてを賭ける壮絶な闘いだった。
■感想
中学生のプロ棋士の孤独が描かれている。普通の中学生がプロ棋士となるだけでもとてつもないプレッシャーだが、零は父の友人であり恩人でもある棋士の幸田に引導を渡している。そして、零は自分のせいで幸田家が壊れたと思い込んでいる。実力優先の世界なので、たとえ子供であっても才能がないと思えば将棋から離れるように言うのだろう。
幸田の行動はある意味、親だからこその優しさなのだろう。零はそのことに気づきながらも自分の責任という考えを捨てることができない。
零は将棋の実力はピカイチでも精神は一般人と変わらない。義理の姉が壊れていき不倫に走る。零はそれを見て自己嫌悪におちいる。孤独を紛らわすためにひたすら将棋にのめりこんでいく零。本作を見ると、将棋の藤井くんは大丈夫なのかと心配になる。
将棋の天才といわれた零だとしても学校では常に将棋の勉強を欠かさない。少しでも油断すると足元をすくわれる厳し世界であることは間違いない。零の状況を理解できる人は一握りの教師と近所の川本家の面々だけだ。
本作では将棋の厳しさが描かれている。年齢は関係なく強い者が偉い。トーナメントで父親ほどの年齢の棋士をコテンパンにすることもある。相手からすると、いくら天才といえども自分の子供ほどの年齢の零にボロボロに負け、その後の感想戦でもプライドを壊されるというのはつらい。
これがプロの世界だといわれてしまえばそれまでだが…。前編では零の境遇と先輩棋士たちとの闘いが描かれている。作中では絶対的な王者として羽生っぽい人物も登場してくるのだが…。それは後編で対決するのだろう。
将棋ブームにみごとに乗っかった作品だ。
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