ルビィ 


 2021.11.17      死んだ小説家と死んだ少女が自殺を止める 【ルビィ】

                     
ルビィ [ 重松清 ]
評価:3
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■ヒトコト感想
重松清の作品。自殺した小説家と少女が、死にそうな人を助けることで自分たちの義務を果たそうとする物語。死人が他者の状況を見ると言うのは、作者の他作品でもある。自殺した中年オヤジの小説家と女子高生というのがポイントだろう。世代間のギャップがありつつ、命を救う対象者に対する思いも異なる。非常に重い作品だ。

決して明るく楽しい気持ちになる作品ではない。死が間近に迫った人というのは、どのような心境なのか。ルビィとおじさんは対象者にシンクロすることでその内面を知る。エリートサラリーマンがデリヘル嬢を殺害し自殺するのを止める。それぞれの対象者の悩みがディープで苦しくなる。特にラストのルビィの弟の話は強烈だ。

■ストーリー
作家の仕事に疲れて自殺を図ったダザイさんは、一人の少女・ルビィと出会った。三年前に命を絶った彼女は、「七人の命を救わないと天国に行けないの」。ダザイさんは、その義務を果たす旅に付き合わされ、出会った人たちの心の中に自分と同じ痛みを次々に見つけて…。命の哀しさと尊さに涙する感動の長編。

■感想
自殺した小説家のダザイと少女ルビィ。ふたりは死が間近に迫った人々を救おうとする。エリート銀行員がそれまでのエリート街道から外れて死を選ぶ。なぜ死を選ぶのかは、ダザイが対象者にシンクロすることでその内部を知る。

母親に対する強い思いがデリヘル嬢への偏愛へと変わっていく。世間でありがちな事件なのかもしれない。ダザイがどのようにして自殺を止めるのか。。。結局のところよくわからないまま、銀行員は凶行を思いとどまることになる。なんだか重い話をひたすら読まさせられているような感じだ。

ダザイさんが何かとルビィに言い負かされているのがポイントだ。作家として想像力が足りないと言われる。自殺しようとする者に対する想像力の欠如は、助けられる者も助けられないのだろう。ルビィがまるで何もかもわかっているようなそぶりがある。

ルビィが自殺した原因もよくわからない。ダザイも含め、すべての人がどこか陰鬱とした雰囲気をもっている。そのため、人によっては辛くて最後まで読めないかもしれない。自分的には読み終わって感動したという感想はひとつもなかった。

ラストのルビィの弟の話は強烈だ。ルビィの自殺の第一発見者となった弟。その後、学級崩壊の首謀者となり荒れた生活を送る。そして、妊娠中の担任を階段から蹴り落してお腹の子供ともども殺害するという衝撃的な出来事を止めることができるのか。

小学生の弟がグレて変わったのは間違いなくルビィに責任がある。そのことを理解しているだけに、ルビィはなんとしても弟を止めたいのだろう。小学生らしく、担任を蹴り落した後に、後悔の念から自殺することになる。予定調和的にダザイは止めることに成功するのだが…。

決して、安易に感動できる作品ではない。



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