ロッキード 


 2021.8.31      昭和の大スキャンダルが実は冤罪だった 【ロッキード】

                     
ロッキード [ 真山仁 ]
評価:3
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■ヒトコト感想
ロッキード事件は聞いたことはあるが内容は良く知らない。田中角栄が逮捕されたということと、日本の政界に大きなインパクトを与えたスキャンダルという程度だ。本作はロッキード事件を改めて調査したノンフィクションということになっている。過去の資料や関係者からのインタビューをまとめ、作者なりの結論をだしている。

驚きなのは、これほど大きな事件でありながら、結論としては冤罪という流れになることだ。田中角栄は賄賂を受け取っていたかもしれないが、それはロッキード事件での賄賂ではない。真犯人が別にいるわけではなく、世論の流れで強引に有罪とされた事件だということだ。すでにほとんどの関係者が死んでいる状況のため、真実は不明なのだが、強烈な内容であることは間違いない。

■ストーリー
角栄はなぜ葬られたのか? 新証言と膨大な資料を駆使した人気作家渾身の超弩級ノンフィクション、ついに刊行!フワフワとした事件――元最高裁判事が抱いた違和感とは。前総理逮捕という「特捜の金字塔」は神話に過ぎなかったのか。関係者多数に徹底取材。多くの新証言を得て田中角栄を葬った“真犯人”に迫る。いまロッキード事件の真実が明らかになる。

■感想
世論に誘導され、最初から結論が決まっているような事件は確かにあるのだろう。ホリエモンの事件にしても、もっと大きな粉飾はあったとしても、目立つホリエモンがターゲットにされる。田中角栄にしても、何かしら賄賂を受け取ってはいたのだろう。

真っ白というわけではないが、ロッキードから賄賂を受け取っていたかというと、そうではないらしい。調べられると都合の悪いこともあり、ロッキード以外に後ろ暗いところがあるので、世論からすると、田中角栄を逮捕するということだけが目的だったようだ。

ロッキード事件をリアルタイムに知らない世代からすると、当時の熱狂はよくわからない。ただ、大きなスキャンダルということと、総理経験者が逮捕されたというのはかなりの衝撃なのだろう。ロッキード事件の裁判がつい最近まで行われており、田中角栄が死んだことで被疑者死亡として中止となっていたことにも驚いた。

結局のところ、裁判では結論はでていないということだ。作者が調査したように、角栄を有罪にするのはかなり無理筋だったのかもしれない。裁判で決着がついていないのがその証拠だ。

ロッキード事件の関係者をその生い立ちから描き、どのようなバックグラウンドがあったかまでを詳細に説明する。関係者として逮捕起訴された人は、その当時では当然の商習慣を行っていただけかもしれない。運が悪かったという言葉では済まされないかもしれないが…。

佐藤優が逮捕起訴されたのと似た構図なのかもしれない。世論の流れに検察は逆らうことはできない。強引にでも世論が希望するような結末としなければならないのだろう。世の中には、そんなどうしようもない事件が数多くあるのかもしれない。

ロッキード事件の詳細を知ることができたのはよかった。



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